2014 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半のドイツにおける国民保険化の過程-在宅看護・家事援助を事例として-
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13J40240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 わかな 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドイツ / 社会国家 / 保険 / 扶助 / 在宅看護・家事援助 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、女性が主婦や母親としての役割を果たせない家族に対する支援を展開した在宅看護・家事援助を事例として、機能不全に陥った家族を「標準家族」へと軌道修正することで、社会国家に包摂しようとした試みを歴史的に解明することである。この「標準家族」モデルは、19世紀末から20世紀半ばまでの時代、すなわちドイツにおける「20世紀的社会」を理解する上で重要な糸口である。 採用2年目である平成26年度はまず、前年度の史料収集で入手したフランクフルトの在宅看護・家事援助に関する史料を読み進め、事例分析を行った。8月にはハンブルク大学付属図書館でドイツ救貧・慈善協会の議事録等、在宅看護・家事援助に関連する文献の収集を行ったほか、デュッセルドルフに赴いた。デュッセルドルフは、在宅看護・家事援助の保険給付化を進める上で重要な役割を果たした都市である。同市立公文書館で、デュッセルドルフ在宅看護・家事援助協会関連の未公刊史料や活動報告書を閲覧・収集した一方、デュッセルドルフ大学文書館で、同協会の中心人物であったC・シュロスマンに関する公刊史料の収集も行った。帰国後は、これら史料を整理し、分析を進めた。 年次計画では、ライヒ(全国)レベルでの史料を豊富に所蔵しているベルリンの国立図書館や連邦文書館において史料の閲覧・収集を行う予定だったが、事前の調査でデュッセルドルフに膨大な史料が残されていることがわかったため、今年度はデュッセルドルフのみで行うことにした。 11月には、ハンブルク、フランクフルト、デュッセルドルフにおける在宅看護・家事援助を比較分析して明らかになったことを2014年度西洋史研究会大会において口頭報告した。現在、同学会での報告内容を学会誌『西洋史研究』に論文として投稿する準備を進めている。 このほか、第二帝政期ハンブルクの在宅看護・家事援助をより詳細に扱った論文が刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ライヒ(全国)レベルでの史料を豊富に所蔵しているベルリンの国立図書館や連邦文書館においても史料の閲覧・収集を行う予定だったが、デュッセルドルフに膨大な史料が残されていることがわかり、今年度はデュッセルドルフのみで史料の閲覧・収集を行ったため。もっとも、今年度の最優先課題としていたデュッセルドルフでの史料の閲覧・収集では予想以上に豊富な史料を入手できたため、②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度、平成26年度で比較分析に必要な、ハンブルク、フランクフルト、デュッセルドルフに関する十分な史料が閲覧・収集できたため、平成27年度はベルリンでライヒ(全国)レベルでの史料を閲覧・収集し、三都市の比較分析をより充実させるとともに、その成果を論文として学会誌に投稿する。その作業と並行して、これまでの研究成果を単著として出版する準備を進めていく。
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Research Products
(2 results)