2002 Fiscal Year Annual Research Report
微小管結合タンパクOrbitによる細胞分裂および細胞分化の制御
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14033224
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 喜博 京都工芸繊維大学, ショウジョウバエ遺伝資源センター, 講師 (90201938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅敏 京都工芸繊維大学, ショウジョウバエ遺伝資源センター, 教授 (10142001)
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Keywords | 細胞分裂 / 減数分裂 / 微小管 / 染色体分配 / 細胞質分裂 / ショウジョウバエ / 卵母細胞 |
Research Abstract |
ショウジョウバエから同定された微小管結合タンパクOrbitは、GTPの加水分解に依存して微小管に直接結合し、M期微小管構造の形成に必要なタンパクである。orbit遺伝子の突然変異体では、多倍体細胞が頻度高く観察される。この多倍体化の原因を探るため、(1)染色体分配ならびにそれを制御するM期微小管構造の形成過程をライブ観察するシステムを確立させた。変異体では染色体の赤道面への整列と染色分体の極への移動が阻害されていること、分裂極の中央部で重なり合う極微小管構造の安定化と分裂極間を伸長させる極微小管間のスライドが阻害されていることがわかった。変異体では2極性M期微小管構造の形成、維持、分裂極の伸長が阻害され、このため染色体分配が欠損すると考えられる。一方(2)orbit変異体では細胞質分裂も欠損することを見い出した。分裂後期以降に作られるcentral spindle構造の形成が阻害される。細胞質分裂の開始に必須な微小管+端モーターPavarottiはその上を移動して細胞中央部に集積するが、変異体細胞ではこの移動が認められない。さらにアクチンリング形成に先立ち細胞中央部のcortexに集まるアクチン結合タンパク(Anillin)も変異体では正しく集積されないことがわかった。これらの異常が収縮環形成の欠損につながると推測される。微小管結合タンパクOrbitはM期微小管形成のみならず、微小管とアクチン系細胞骨格との相互作用にも関与し、細胞質分裂の開始を制御している可能性が示唆された。このほか(3)orbitは、雌の生殖細胞系列の細胞分裂ならびに卵母細胞の分化にも必須であることがわかった。卵母細胞の分化には卵母細胞と哺育細胞を繋ぐ間期微小管構造が必要である。orbitは、M期微小管構造のみならずこの極性をもった間期微小管構造の形成にも必須であることが分かった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Mathe, E., Inoue, Y.H., Glover D.M.: "Orbit, the CLASP orthologue of Drosophila, is required for asymmetric stem cell and cystocyte divisions anddevelopment of the polarised microtubule network that interconnects oocyte and nurse cells during oogenesis"Development. 130. 901-915 (2003)
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[Publications] Takata, K.Inoue, Y.H., et al.: "Spatio-temporal expression of Drosophila mitochondrial transcription factor A during development"Cell Biology International. 27. 361-374 (2003)
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[Publications] Higashiyama, H., Hirose, F., Yamaguchi, M., Inoue, Y.H., Fujikake, N., Matsukage, A., Kakizuka, A: "Identification of ter94, Drosophila VCP, as a modulator of polyglutamine-induced eye degeneration"Cell Death Differ.. 9. 264-273 (2002)
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[Publications] Kawano, J., Nakayama, T., Kotani, T., Matsubayashi, H., Yamamoto, M-T., Suganuma, T: "Identification and characterization of an insect homologue of the vertebrate Golgi apparatus protein 1 (MG-160/cystein-rich fibroblast growth factor receptor/latent transforming growth factor-beta complex protein-1) with a Golgi-specific monoclonal antibody"Histochem. Cell Biol.. 117. 381-389 (2002)
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[Publications] 井上喜博, 西田育巧: "生物薬科学実験講座 8巻 遺伝子(II)"名取俊二 編 廣川書店. 10 (2003)
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[Publications] 井上喜博: "ゲノムの複製と分配"松影昭夫・正井久雄編 シュプリンガーフエアラーク東京. 8 (2002)