2002 Fiscal Year Annual Research Report
脊索動物の起源と進化:内柱および鰓裂特異的遺伝子群を用いた解析
Project/Area Number |
14034210
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小笠原 道生 千葉大学, 理学部, 助手 (00343088)
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Keywords | 内柱 / 鰓裂 / 脊索動物 / 分子系発生 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
脊索動物は脊索・神経索・鰓裂・内柱などの形質によって特徴づけられる。したがって、下等脊索動物におけるこれらの器官の分子的解析は、脊索動物のボディープランの進化を理解する上で重要である。本研究では尾索類ホヤの内柱および鰓裂に着目し、これらの器官が形成される幼若体ステージでの網羅的遺伝子発現解析をもとに内柱特異的遺伝子・鰓裂特異的遺伝子の同定を試みた。976クラスタ(5,177 EST 相当)の発現をホールマウントin situハイブリダイゼーション(WISH)により調べた結果、内柱特異的遺伝子候補が21個、鰓裂特異的遺伝子候補が94個が得られた。さらに内柱特異的遺伝子候補の詳細な解析を、幼若体および成体の内柱のWISH、成体の組織別RNAドットブロッティング、Northernブロッティングにより解析し、最終的に6個の新規内柱特異的遺伝子Ci-vWFL1,Ci-vWFL2,CiEnds8,CiEnds9,CiEnds10,CiEnds11を同定した。Ci-vWFL1とCi-vWFL2は幼若体および成体内柱のそれぞれゾーン4,2で特異的に発現する遺伝子で、コードするアミノ酸配列は互いに類似性があり、ほ乳類のvon Willebrand Factor (vWF)のC末側領域と類似のドメイン構成を持つことがわかった。これは内柱特異的分化マーカーが既知のタンパク質と類似性を持つ初めての事例であり、内柱の分子進化の解析に有用なツールとなる。また、ゾーン2,4で類似遺伝子が発現することとゾーン2,4が類似の分泌顆粒をもつという過去の知見が相関する可能性がある。CiEnds8は幼若体のゾーン6全体で発現し、成体ではゾーン6の両端のみで発現する。CiEnds9とCiEnds10はそれぞれ幼若体のゾーン6,4で一過的に発現する。これらのことは幼若体と成体の内柱を構成する細胞の性質が異なるということを示唆する。また、CiEnds10が発生・成長・変態に関与する転写因子であるThyroid hormone receptorの活性化に必要な結合領域をコードすることも興味深い。CiEnds11は甲状腺関連転写因子TTF-1と類似する発現パターンを示し、関連が期待される。
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Research Products
(1 results)