2002 Fiscal Year Annual Research Report
血液透析における内分泌攪乱物質のリスク評価と高機能透析膜による除去効果の検討
Project/Area Number |
14042263
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
杉山 敏 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (50340229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼田 信光 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30135123)
日比谷 信 藤田保健衛生大学, 短期大学, 講師 (70259323)
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Keywords | 内分泌撹乱物質 / 血液透析 / フタル酸ジエチルヘキシル / ビスフェノールA / ノニルフェノール / 透析膜 / 透析用血液回路 |
Research Abstract |
【はじめに】血液透析には血液灌流用塩化ビニル(PVC)チューブと医療用プラスチックを多用している。血液透析による内分泌攪乱物質のリスク評価と内分泌撹乱物質に対する暴露を軽減する手段として、透析膜による吸着除去について検討する。【実験方法】1.透析膜に加工する材料:セルローストリアセテート(CTA)、ポリスルホン(PS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルホン(PES)は、日機装(株)から提供された。セルロース、PMMA、活性炭は試薬を用いた。透析膜は、セルロース膜、PMMA膜、CTA膜、PARとPESから加工されたPEPA膜、PS膜、活性炭を用いた。これらを凍結粉砕機(吉田製作所製)を用いて粉砕した。2.フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)、ビスフェノールA(BPA)およびノニルフェノール(NP)の定量;血清中のDEHP、BPAおよびNPは、固相抽出により粗精製し窒素気流下に蒸発乾固した。これをHPLC移動相で溶解し、HPLCで定量した。DEHPは、UV検出器を用い202nmで、BPAおよびNPは、蛍光検出器を用いEx275nm、Em300nmで測定した。また、BPAについては、ELISA法も行った。【結果】DEHPは、透析膜材料粒子に対しては吸着が一般的に悪く、透析膜に対してはPS、PEPAで吸着が観察された。NPは、透析膜材料粒子に対しては吸着が良好であり、透析膜に対してはとくに、PS、PEPAで強い吸着が観察された。BPAは、透析膜材料粒子と透析膜の両者で比較的に吸着が悪かった。【考察・結論】材質については、透析膜材料粒子と透析膜へのDEHP、NPおよびBPAの吸着は親水性膜(Cellulose,CTA)より、疎水性膜(PS,PEPA)の方が良好であった。透析膜材料粒子と透析膜を比較すると、透析膜の方が透析膜材料粒子よりも吸着率が一般に高い傾向を確認した。これは、透析膜の加工段階で透析膜全体に50〜100Åの細孔が無数に開口され、血清と接触する表面積が非常に大きくなったこと、細孔へのとりこみによると考えられる。つまり、素材の材質と形状の両者を考慮する必要性が示された。透析回路から溶出の報告があるDEHPの除去を行うには、吸着能を考慮して透析膜の材質と形状を選択する必要があると考えられる。
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