Research Abstract |
今年度は,研究目的として掲げた5テーマに関して,下記の研究成果を得た。 1.人間・環境に適応する建築・都市・社会システムシミュレーション 河村:環境負荷の低減を目指すリカレント建築ネットワークの実現のため,WEBデータベースによる部材情報管理システム,部材組合せの創発的設計システム,資源循環型社会システムの構築と検証をコンピュータシミュレーションにより行った。 2.重力,地震などの種々の環境外乱に適応する,建築物の制御やデザイン方法の検討 新宮:前年度,比較的単純なON-OFF制御を利用したクラッチ式可変剛性構造物を提案したが,これの制御規則を改善して実験を行い,種々の入力に対して良好な制御効果を得た。 谷:知的ファジィ最適アクティブ制御システムを提案し,頂部AMDの2層鋼製供試体の振動実験とシミュレーションを行った。さらに,偏心を有する構造物や弾塑性復元力特性を有する構造物への本手法の有効性を確認した。 藤谷:減衰力を可変にできるダンパーとして開発が進んでいるMRダンパーを設置した免震構造共同住宅に対して,シミュレーションによって,その有効性が検証できた。 山邊:耐震補強部材の組合せ配置最適化問題を対象に,補強計画・評価関数を自律的に共進化させるシステムを構築し,各評価関数が相互に不明確な点を補完しつつ協調的に進化するシステムの有効性を示した。 3.人間の嗜好を反映するインタラクティブな設計システムの提案 新宮:茶室空間に於て,コンポジション生成要素である矩形のスケール分布状況は,3種に大別できることを明らかにした。 堤:大空間構造を対象として,ファジィ理論を用いて力学的合理性と人間の感性を考慮する感性デザイン評価システムを構築した。人間の感性は,VRMLにより種々の形態を表示し,アンケートによりニューラルネットワークを利用して学習を行った。 4.創発的な都市のモデリング,ダイナミクス分析,マルチフラクタル形態分析,環境影響評価 奥:都市における土地(エージェント)利用の変化過程を土地エージェント間の利害損得ゲームと捉え,セル・オートマトンを利用してシミュレーションを行い,土地利用パターンの変化を明らかにした。 朝山:商業用地の成長を複雑系的アルゴリズムに基づきシミュレーションするプログラムを開発し,昭和50〜60年代から平成7年の期間における東京渋谷区,港区,新宿区の商業用地の成長を解析した。平成7年の土地利用現況図と比較し、規模の大きい商業用地が徐々に周辺へ拡大する状況が概ね再現できた。 5.社会組織の基礎的なモデル化,ダイナミクス分析,システムデザイン 谷本:マルチエージェントシミュレーションに基づき建設業における談合創発のメカニズムをモデル化し,業者コミュニティで共有される情報の優位性について述べた。また,これに関連し,ゲーム論に依拠した演繹的検討も併せて行った。 藤井:人間-環境-社会系モデルの説得性や説明力の向上を目標とし,系を形式論理言語表現とポテンシャル場表現の二重構造として表現する理論モデルの構築を行っている。都市空間や建築空間における移動行動,社会生活や設計行為における意志決定や探索の説明を試みた。 瀧澤:鹿児島建築市場の現場管理システムを模したマルチエージェントシステムを構築し,職人の工事の掛け持ち数やアクシデントの確率を変化させ,予定が立つことと全体の工期にどのような関係にあるのかを把握した。
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