安定同位体トレーサー法によるリグニン生合成の同的解析

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14360097
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 福島 和彦 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (80222256)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 松下 泰幸 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (60335015) ; 安田 征市 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (80002070)
• Keywords: コニフェリン / コニフェリアルアルコール / コニフェリルアルデヒド / リグニン / イチョウ / 生合成

Research Abstract

安定同位体元素でラベルしたコニフェリルアルコールとコニフェリンを広葉樹にそれぞれ投与して、生成したリグニンを化学分析した結果、一部の投与物質リグニンに招待される前に、アルコール構造からアルデヒド構造に酸化され再びアルコール構造に還元されたことが示された。その割合はコニフェリルアルコールよりもコニフェリンで高かった。またコブシ(配糖体貯蔵広葉樹)とユーカリ(配糖体非貯蔵広葉樹)における取り込みに、コニフェリンの貯蔵の有無が関与していることが示唆される差も現われた。広葉樹はシリンギルリグニンも多く含むので、シナップアルデヒドグルコシド、シリンギンも投与に用いた。オートラジオグラフィーによって、コニフェリン、コニフェリルアルデヒドゲルコシドのアグリコン由来のラベルは、コブシ(配糖体貯蔵広葉樹)においては木部細胞壁に取り込みが認められた。またシリンギンアグリコン由来のラベルは少なく、放射柔細胞および道管壁に取り込みが見られた。シナップアルデヒドグルコシドアグリコン由来のラベルも木部で認められるものの、非常に弱く、コニフェリルアルデヒドグルコシドの活発な取り込みとは対照的だった。キョウチクトウ(配糖体非貯織広築樹)においてもコニフェリン、コニフェリルアルデヒドグルコシドのアグリコン由来のラベルは木部細胞壁に取り込みが認められた。コブシとキョウチクトウにコニフェリンおよびコニフェリルアルデヒドグルコシドを投与した結果、グアイアシルリグニン、シリンギルリグニンどちらにもアグリコンの取り込みが見られた。しかしシリンギルリグニンへの取り込みはグアイアシルリグニンへの取り込みに比へて少なかった。またシリンギルリグニンへの取り込みは、コブシでは、コニフェリルアルデヒドグルコシドを投与した場合のみ取り込みが見られた。一方キョウチクトウでは、コニフェルアルデヒドグルコシドからの取り込みと、少量のアルデヒド経由コニフェリンの取り込みが見られ、アルコール経路のみを通ったコニフェリンの取り込みは認められなかった。キョウチクトウは配糖体を貯蔵しないので、投与したコニフェリンが希釈されることは無い。したがって、コニフェリンよりもコニフェリルアルデヒドグルコシドのほうがリグニン前駆物質として優勢であること、さらにグアイアシルユニットからシリンギルリグニンユニットへの転換にはアルデヒド構造が寄与していることが示唆された。

Research Products

• [Publications] Yukiko Tsuji, Fang Chen, Seiichi Yasuda, Kazuhiko Fukushima: "The behavior of deuterium-labeled monolignol and monolignol glucosides in lignin biosynthesis in angiosperms."J Agric Food Chem. 52・1. 131-134 (2004)
• [Publications] K.Hamada, Y.Tsutsumi, K.Yamauchi, K.Fukushima, T.Nishida: "Treatment of poplar callus with ferulic and sinapic acids I : incorporation and enhancement of lignin biosynthesis."J.Wood Science. 47・4. 333-338 (2003)
• [Publications] K.Yamauchi, S.Yasuda, K.Hamada, Y.Tsutsumi, K.Fukushima: "Multiform biosynthetic pathway of syringyl lignin"Planta. 216・3. 496-501 (2003)
• [Publications] Kazuhiko Fukushima: "Stable isotope tracer experiments give strong evidence supportong a controversial pathway in lignin biosynthesis, In "Inprovement of forest resources for recyclable forest products" T.Ona Ed."Springer. 188 (2004)