Research Abstract |
本年の研究では,ラット心臓モデル於いて,(1)抗ICOS抗体とCD28に結合し免疫抑制作用を有する組み換え蛋白CTLA-4をアデノウィルスに発現させたAdCTLA-4Igを用いて免疫寛容導入動物の作成を試みた。また(2)雄性マイナー組織適合抗原H-Yを指標とする,免疫感作法と長期胸管リンパ排導法を用いて,メモリーT細胞の細胞動態を解析した。 本研究結果から,新規に発見された抗ICOS抗体と従来報告・使用されてきた,CD28に結合するCTLA-4は,免疫寛容導入作用が,非拮抗的に作用し,より強固な免疫寛容導入作用を有する事が明らかとなった。本免疫抑制作用が,これまで報告されてきた,免疫調節T細胞,即ち,CD4陽性CD25陽性細胞の増殖をもたらす結果であるか否かを検討中である。 また,長期胸管リンパ排導法を用いたメモリーT細胞の研究結果から,メモリーT細胞は,リンパ球の再循環ルートにはほとんど存在せず,主に末梢リンパ組織中に存在する事が示唆された。また,長期リンパ排導法により,リンパ液中には,多数のクラスII陽性,活性化T細胞が動員される事が明らかとなったが,本細胞集団にメモリーT細胞が動員されるか否かに関しては,決定的証拠は未だ得られていない。また,20日以上にわたる長期リンパ液排導法によって,もたらされるリンパ球欠乏症状と,多数のクラスII陽性,活性化T細胞の存在下では,免疫学的メモリーが失われる結果を示すが,これは,しかしながら,長期リンパ液排導法がもたらす,一時的なリンパ球欠乏症を生理的に代賞する未だ明らかでないメカニズム,即ち抗原非特異的なリンパ球刺激が作用した結果と考えられ,事実,リンパ液排導を停止の後,一ケ月後には,雄性特異抗原H-Yに対するメモリーT細胞の存在が皮膚拒絶反応によって示された。
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