2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510371
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
鵜飼 尚代 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (10333262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田尻 紀子 愛知女子短期大学, 言語コミュニケーション学科, 助教授 (30211361)
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Keywords | 朝林 / 幕府日記 / 堀貞高 / 松平君山 / 右筆所日記 / 御用部屋日記 / 視聴日録 / 御城附 |
Research Abstract |
平成14年度は、毎月1回のペースで研究会を開催(計13回)し、7月〜9月の間に史料の調査蒐集を行って、期末に史料を整理(CD-R化と印刷)した。研究会では『朝林』の輪読と関連研究の報告を行い、『朝林』の内容分析と、成立事情の解明、特徴の把握に努めた。以下、具体的に実績をまとめる。 (1)『朝林』の釈文:研究会では毎回30丁の釈文を行い、『朝林』前編巻14〜巻18まで354丁を読み進めた。 (2)研究状況 (1)『朝林』の成立について 『朝林』前編の記事を蒐集した堀貞高については、研究協力者田辺裕が研究を続けている。堀貞高は尾張藩二代藩主徳川光友の寵遇を受け、側近として活躍した人物だが、法名「忍節院阿剣勘入居士」中に「剣」の字があることから、罪を問われて刑死した可能性がある。貞高が刑死したと明言する記録はないが、『士林泝〓』での『敬公行状』の扱いなど、貞高の死の異常さを暗示する。(田辺裕「『士林泝〓』と『敬公行状』-尾張藩士の系譜集の堀貞高伝の読み方-」〔『藝林』51巻2号〕)おそらく貞高は『朝林』編纂に関連して、将軍徳川綱吉から死を賜ったのではないかと予測される。 (2)『朝林』の内容分析 小宮木代良氏は『徳川実紀』の分析から、幕府の「日記」を「(御用部屋)日記」(=「殿中御沙汰書」)と「右筆所日記」の2系統に分ける。『朝林』記事を小宮氏の研究に照らしあわせて考えると、『朝林』は「(御用部屋)日記」を写しただけのものでないことは明らかである。情報の入手経路については、「坊主」から「御城附」が直接得た情報や、他藩から直接尾張藩へ「注進」された情報もあり、さらなる分析を要する。 また、災害記事に限って『朝林』を分析すると、災害(火事、洪水、雷雨、地震など)については、前編巻5の寛文9年6月2日から記事として登場する。従って、明暦3年江戸大火(明暦の大火)にも全く触れられていない。『朝林』を編纂した松平君山の意図というより、記事を集めた堀貞高の意図に何らかの変化があったと考えられる。 (3)『朝林』の特色について 特に幕府の「日記」類や、水戸藩の『視聴日録』と比較検討している。しかし手元にある史料では、記事の時期が重ならず、記事のテーマや用語の比較を中心に行っている。
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