Research Abstract |
1.1985,95年アジア・太平洋地域国際産業連関表(アジア経済研究所作成)を基礎データとして,可変投入係数を持つ一般均衡モデルを構築し,アジア域内貿易の構造を実証的に明らかにした(得津一郎・斎藤美香「アジア域内貿易の構造」『産業連関』11巻1号)。 (1)域内市場の需給調整メカニズムを特徴付ける超過供給関数のヤコブ行列を推定した結果,正の対角要素をもつドミナントダイアゴナル行列であり,多国多数市場の均衡は安定的である。 (2)特定の国の市場攪乱が域内の他の国の経済にどのように波及するかをシミュレーションによって確認した結果,同一量,同一方向の攪乱であっても,波及効果の方向は同一方向ではなく,経済が改善される国と改善されない国に二分される。 (3)域内各国間の財の相対価格(交易条件)の変化は,貿易収支を変化させる。その結果,中国とアメリカ以外では,一国の経済拡張政策は,却って貿易収支を悪化させる可能性がある。 (4)拡張政策の結果,貿易総量は必ずしも増大せず,インドネシアにおいては中間財,最終財の貿易は共に縮小均衡を生じさせる。 2.1970,75,80,85年不変価格表示EU国際産業連関表(蘭中央計画局Alex Hoen作成:独,仏,伊,蘭,ベルギー,デンマーク)を基礎データとして,貿易の六面体構造を実証的に明らかにした(Ichiro Tokutsu, Intra EU Trade Hexahedron, mimeo)。 (1)市場の拡張の波及効果を推計した結果,独,仏では拡張政策が自国に留まり大きな効果を持つが,他の国,特にイタリア,ベルギー,デンマークのような小国では,価格の上昇が大きく,その結果貿易収支が悪化する。 (2)域内全体での貿易収支は改善されるものの,それらを中間財,最終財に二分して分析すれば最終財については貿易総量が減少し縮小均衡が生じる可能性がある。
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