2003 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性腸疾患の治療薬としてのPPARγリガンド、RXRリガンドの有効性の解析
Project/Area Number |
14570446
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
松橋 信行 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (10221590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 淳 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (30326037)
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Keywords | PPARγ / 腸管虚血 / 虚血性腸炎 / 免疫染色 / 虚血再灌流傷害 |
Research Abstract |
ヒト虚血性腸疾患に対する治療薬としてPPARγリガンドが有効であるかどうかを評価することを目的として引き続き研究を行った。このため、マウス虚血再灌流腸管傷害の系での実験で虚血性腸管傷害発生後の腸管でのPPARγ発現の経過を解析した。その結果、無処置の正常腸粘膜ではPPARγは一部の上皮細胞の細胞質、多くの粘膜固有層リンパ球と上皮間リンパ球の細胞質に発現していた。これに対し、虚血再灌流腸管傷害誘導により腸粘膜は大幅に脱落し、残存した粘膜では上記の細胞に若干のPPARγの発現を認めた。PPARγリガンドを前投与しておいて虚血性腸管傷害を誘導すると、粘膜傷害はごく軽度に終わり、そこでのPPARγ発現は、分布は正常粘膜の場合とほぼ同様だが、発現強度は正常粘膜より軽度だった。経時的変化については、まず、PPARγリガンド投与後虚血再灌流腸管傷害誘導前の時点ではPPARγ発現は殆ど変化がなく、その後虚血再灌流腸管傷害誘導に伴って発現がやや低下した。一方、実際のヒト虚血性腸疾患及び炎症性腸疾患においての腸管でのPPARγ発現の状態を評価した。虚血性腸炎の生検組織のPPARγ発現を調べた結果、虚血性腸炎の病変腸粘膜には正常粘膜とほぼ同程度のPPARγ発現が見られた。更に、研究代表者の施設の倫理委員会の承諾を得た上でヒトの虚血性腸管傷害の症例に対してインフォームドコンセントの下にPPARγリガンドを投与し、経過を観察した。その結果、合計8例の虚血性腸炎患者にPPARγリガンドを投与し、その結果、全例で急性期症状(腹痛)の軽快をみた。それらのうち腸粘膜生検組織が採取できた症例では、上皮細胞と炎症細胞の細胞質のPPARγの発現は正常大腸よりやや強い傾向がみられた。この発現の差がヒトの虚血性腸炎とマウスの虚血性腸管傷害でのPPARγリガンドの効果の差の一因かもしれない。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Matsuhashi N, Nakajima A, et al.: "Inflammatory fibroid polyps of the stomach and Helicobacter pylori."Journal of Gastroenterology and Hepatology. 19(3). 346-347 (2004)
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[Publications] Osawa E, Nakajima A, Matsuhashi N, et al.: "Suppressive effect of peroxisome proliferator-activated receptor γ ligands on the formation of aberrant crypt foci and colon tumors induced by azoxymethane in mice"Gastroenterology. 124(2). 361-367 (2003)
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[Publications] Matsuhashi N, Nishi Y, Nagoshi D, et al.: "Epidemic enterocolitis possibly as a result of Norwalk virus infection presenting as ischemic colitis"Digestive Endoscopy. 15(2). 138-141 (2003)
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[Publications] Matsuhashi N, Akahane M, Nakajima A.: "Barium impaction therapy for refractory colonic diverticular bleeding"American Journal of Roentgenology. 180(2). 490-492 (2003)
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[Publications] 松橋: "大腸虚血による腹痛に対してPPARγリガンド(ピオグリタゾン)が有効であった症例"治療学. 37(4). 100-2 (2003)
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[Publications] 松橋, 鈴木, 中島: "虚血性腸疾患に対するPPARγリガンドによる治療の可能性"消化器科. (印刷中).
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[Publications] 松橋, 中島: "虚血性腸疾患治療薬としてのPPARγリガンドの可能性"消化と吸収. (印刷中).