Research Abstract |
関節内の骨軟骨全層欠損の修復には,軟骨石灰化前線を含む軟骨層と軟骨下骨層の再生が不可欠である.これまで研究代表者らは,自家骨髄間葉系細胞移植12週後,骨軟骨欠損が硝子軟骨様組織で修復されることを報告した.さらに,transgenic ratを用いて自家移植細胞を宿主細胞から識別する方法を確立し,修復組織内での移植細胞の生存を確認した.以上の結果を,48^<th>Orthopaedic Research Society, USA,2002,および第17回日本整形外科学会基礎学術集会,2002で発表した.しかし,修復軟骨組織は,本来の硝子軟骨より厚く,軟骨下骨の再構築も未完成であったため,長期での経過観察が必要であると考えた. そこで本年度は,長期モデルを作製し,骨軟骨全層欠損の修復過程の観察と,移植細胞の動態追跡を行った.その結果,移植24週後,深層部の軟骨下骨の再構築と,浅層部の硝子軟骨様組織による修復を認めた.また,DNA in situ hybridization (ISH)の結果,軟骨層および軟骨下骨層にシグナル陽性細胞,すなわち移植細胞由来の細胞を認めた. 軟骨層と軟骨下骨層を含む骨軟骨全層欠損に対し,ISHの結果,移植細胞の生着が両層で確認できたことから,移植骨髄間葉系細胞が,骨組織および軟骨組織の両系統へ分化し,骨軟骨全層欠損の修復に有用なツールであることが示された.以上を49^<th> Orthopaedic Research Society, USA,2003で報告した. 今回,軟骨下骨は再構築されたが,いまだ修復硝子軟骨様組織は正常軟骨より厚く,石灰化前線も再生されなかった.そこで,サイトカインなどを用いた組織工学を駆使する必要があると考えられ,BMPなどの間葉系細胞への作用の解明や,石灰化前線構築における役割を追跡していく予定である.
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