Research Abstract |
酵素の有する高度に制御された触媒機能を模倣し応用することによって,酸アミド化合物を選択的,効率的に合成する実用的な非金属性の分子触媒の開発を行い,本年度は以下のような研究成果を得た。 (1)シクロデキストリンを用いたアシル基転移酵素モデル:CD触媒の構造の影響を観察するために,まず,α,β,およびγ-CDを用いてそれぞれの空孔に特異的な親和性を有するカルボン酸の選択的アミド化が進行することを明らかにした。次に,β-CDについては,6位の水酸基をすべて遊離状態にしたもの,すべての水酸基をすべてを遊離状態にしたもの,および,触媒部位となる3級アミノ基を従来のエステルのほかに酸アミド基で結合させたものなどを合成し,その評価を行った。その結果,触媒の合成しやすさ,安定性,基質特異性の点から,現時点ではパーメチル化体が最も優れていることを明らかとした。 (2)液一液二相系での基質特異的反応:水溶性の脱水縮合剤を用いて酵素反応と同等の基質特異性の発現に成功した。すなわち,水溶性のCDを逆相間移動触媒として液-液二相系で用いることによって,水相を特異的な反応場として利用する反応系を開発した。 (3)固相吸着型簡易試薬系の開発:(2)の反応加速を一つの目的として,水相を固体粉末状に吸着させることによって,液一液二相界面積を大幅に増大させ,反応の著しい加速を実現した。 (4)アシル基転移酵素モデルとして,ミセル水界面を利用したセラミド合成酵素モデルを開発し,著しい反応の加速と高い基質選択性の発現に成功した。
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