2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14580159
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Research Institution | Ueno Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
福永 淑子 上野学園大学短期大学部, 家政科, 教授 (40199253)
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Keywords | スルメイカ / 高温スルメ / 低音スルメ / アルカリ戻し / 水戻し / 破断応力 / 筋原繊維 / 筋肉繊維 |
Research Abstract |
目的:低温で乾燥させたスルメ(低温スルメ)と高温で乾燥させたスルメ(高温スルメ)を調製し、乾燥法の違いによって、水で戻したスルメとアルカリで戻したスルメの吸水性、色、および物性の違いを調べることを目的とした。また、スルメを戻す過程でおこるたんぱく質の組成変化、組織構造変化も調べ、乾燥法によってスルメの吸水性や物性の異なる原因を検討した。方法:スルメイカの外套膜を2等分して、一方は4℃で、他方は40℃で、乾燥させ、スルメを調製した。スルメを体軸に対して45度に1x3cmの長方形に切り、測定試料とした。戻し方はまず、水に12時間浸漬し、次に10mM炭酸カリウム水溶液(pH11.0)に12時間浸漬後、6時間再度水に浸漬しアルカリを除いた。このようにして戻したスルメを水戻し低温(高温)スルメ、アルカリ戻し低温(高温)スルメとし、これらの吸水性、物性、色差、電気泳動によるたんぱく組成、光学顕微鏡による組織構造を調べた。結果と考察:水戻しにより低温スルメは重さが2.5倍、高温スルメは2倍に、アルカリ戻しによりそれぞれ4倍、3.4倍になり、低温スルメは高温スルメより吸水性が高かった。破断応力及び破断エネルギーはアルカリ戻しをすると、水戻しより格段に低くなったが、水戻しでもアルカリ戻しでも高温スルメは低温スルメより有意に高く、硬かった。b値は高温スルメが低温スルメより有意に高く、メイラード反応が進んでいることが示唆された。高温スルメの電気泳動パターンから乾燥中にタンパク分解が起こっていることが推察された。低温スルメの電気泳動パターンは生イカのそれとほぼ同様であったが、水戻しすると高温スルメの泳動パターンとほぼ同様になった。アルカリ戻し低温スルメ、高温スルメの泳動パターンは水戻しのそれと殆ど変わらなかった。組織構造は水戻し低温スルメでは筋原繊維が個々に乾燥していたが、水戻し高温スルメでは束になって乾燥している様子がみられた。アルカリ戻しをすると、どちらのスルメも多量の水が浸透し、隙間が観察されたが、その度合いは低温スルメの方が大きかった。以上の結果から、高温スルメが低温スルメより硬いのは、高温スルメの乾燥中にメイラード反応とタンパク分解によるミオシンの変性および分解がおこり、これが吸水性の低下や筋肉繊維の束の形成を引き起こしていることが原因の1つとして考えられた。
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