2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14580295
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
島田 恭仁 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90178955)
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Keywords | 学習障害 / 読み指導 / 認知的方略訓練 / 関係処理 / 項目特定処理 |
Research Abstract |
科研費交付の初年度にあたる平成14年には,学習障害の可能性を有する4名の児童の教育相談を,大学の研究室において受理した。これらの児童に対して各種心理検査(WISC-III・K-ABC・ITPA等)を実施し,さらに,生育歴の確認,行動観察,授業観察を行って得られた所見をもとに教育的判断を行ったところ,いずれの児童も学習障害の基準に該当する児童であることが確かめられた。 保護者との面談の上,読み書きや計算の基礎的な学習スキルを向上させることを指導目的とすることにし,3名には特別な教育的支援の体制を整えるための間接指導を試み,残りの1名については,研究代表者による直接指導を実施することにした。直接指導の対象児(事例A)の選定理由は,認知能力のアンバランスが「注意記憶」「処理速度」に関連する記憶の制御困難に依拠して生じていると考えられたことによる。 事例Aの詳細なアセスメント結果から,本児の場合,年齢相応の語彙量を有していても,文の理解や推論では明らかに劣っていることが確かめられたため,記憶の制御困難が特に語意の関係処理の妨げとなり,結果的に構文技能の阻害要因になっていることが示唆された。従って,関係処理の弱さを項目特定処理で補う多面的な方略訓練を読み指導に取り入れて,個別の教育的支援を実施した。約8ヶ月間の指導の結果,読み能力診断検査の文理解・文意記憶の課題での10段階点の向上が認められ,テスト用の物語教材では,視覚的誤読・音韻的誤読・意味的誤読が全般に減少するなどの改善が認められた。 これらのことより,本研究の14年度の目的は,十分に達成できたと言うことができる。
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