2004 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンカモシカ保全の基礎としての食物条件と繁殖パラメータの関係の解析
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14580605
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
落合 啓二 千葉県立中央博物館, 環境科学研究科, 上席研究員 (40250154)
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Keywords | ニホンカモシカ / 個体群動態 / 食物条件 / 繁殖成功率 / なわばり性 / なわばりサイズ |
Research Abstract |
1.青森県下北半島において,識別個体の成獣メス3頭の繁殖状況を確認した.昨年度生まれの1年子は0頭,今年度生まれの当年子は1頭であった. 2.森林下層植生に対するカモシカの採食圧を明らかにするため,1998年に設定した試験区(2×2mの柵試験区と同面積の無柵試験区5組)において,柵設置6年後の追跡調査を行った.主要食物であるオオバクロモジの樹高は,柵区では34cm→62cmとなったのに対し,無柵区では32cm→41cmにとどまった.食物となる冬芽の総数は,柵区では1039個→702個,無柵区では1268個→661個であり,樹高,冬芽量ともにカモシカの採食の影響が認められた. 3.冬期(2月)の食物供給量について,研究協力者より提供を受けた長野県上高地のデータを用い,これまで調査を実施した青森県下北半島および山形県朝日山地のそれとの比較を行った.その結果,上高地の冬期の食物供給量は脇野沢の38%,朝日山地の58%であった.3地域の成獣メスのなわばりサイズは,下北半島で約10ha,朝日山地で約30ha,上高地で約100haであり,冬期の食物供給量が多いほどなわばりサイズが小さい傾向が認められた.一方,これまでの調査結果では,この3地域の冬期の食物の質には差異が認められなかった.今後,この3地域における成獣メスの繁殖成功度の既存データをとりまとめ,食物条件と繁殖成功度の関係について比較検討する予定である.
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