2005 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンカモシカ保全の基礎としての食物条件と繁殖パラメータの関係の解析
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14580605
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
落合 啓二 千葉県立中央博物館, 環境科学研究科, 上席研究員 (40250154)
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Keywords | ニホンカモシカ / 個体群動態 / 食物条件 / 繁殖成功率 / なわばり性 / なわばりサイズ / 生息密度 / 生息地の質 |
Research Abstract |
1.青森県下北半島において,識別個体の成獣メス5頭の繁殖状況を調査した.昨年度生まれの1年子と,今年度生まれの当年子の生息が各1頭確認された. 2.成獣メスが出産し,かつ生後1年までその子が生存した場合を繁殖成功とした.本研究代表者によって1975〜2004年に調査された下北半島の繁殖成功率のデータのとりまとめを行った結果,38.1%(N=118)であった. 3.研究協力者より提供を受けた2地域の繁殖成功率のデータのとりまとめを行った.山形県朝日山地(1976〜2004年)では29.6%(N=115),長野県上高地(1992〜2004年)では15.8%(N=19)であった. 4.上記3地域における本研究課題によるデータ,研究協力者からの提供データ,および既存の公表データに基づき,カモシカの生息密度,なわばりサイズ,食物条件,繁殖成功率の相互関係を解析した.その結果,なわばりサイズと生息密度の間,冬期食物量指数と冬期採食効率の間,冬期食物量指数となわばりサイズの間,及び冬期食物量指数と繁殖成功率の間で,それぞれ相関関係が認められた.即ち,海岸沿いで標高が低く,積雪量の少ない下北半島では,好適な食物条件に支えられる狭いなわばりサイズと高い繁殖率が高い生息密度をもたらしていること,反対に標高が高く,気象条件の厳しい亜高山帯の上高地では,低質な食物条件に起因する広いなわばりサイズと低い繁殖率が低い生息密度をもたらしていること,また山地帯に属する朝日山地では,食物条件,なわばりサイズ,生息密度,繁殖成功率のいずれも下北半島と上高地の中間の値となることが示された.
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