2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14654133
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
山門 英雄 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (30242035)
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Keywords | フタロシアニン / フレキシブル / 柔軟性 / 単結晶 / 電気伝導性 |
Research Abstract |
本研究ではフレキシブルな単結晶を開発し研究している。通常、「フレキシブル」である(小さな曲率半径で曲げても折れない)ということと、「単結晶」であるということは、分子性結晶やイオン性結晶では両立し難いことであるが、筆者は有機色素分子であるフタロシアニンの陽イオンと、PF_6-陰イオンの組み合わせで、通常では考えられないほどの柔軟性を持つ単結晶を作成した。(例えば長さ3mm、太さ20μm程度の単結晶でループを作っても折れず、外力を外せば元の形状に戻る。)イオン性を持つと考えられる単結晶でありながらこれほどまでの柔軟性を示す例は殆どなく、結晶構造との関係が注目される。 本研究で得られた単結晶についてX線結晶構造解析を行ったところ、この結晶は従来知られているフタロシアニン含んだ物質の結晶構造とは大きく異なり、3回対称牲のある特異な分子配列を持つことが明らかとなった(空間群R3-、a=b=36.86Å、c=4.872Å、γ=120°)。この分子配列が、結晶の柔軟性と大きく関係していると考えられる。またアニオン部にはディスオーダーが見られ、その組成を元素分析や質量分析などの手法を用いて現在検討しており、アニオン部にはPF_6-アニオン以外に、HPO_2Cl-アニオンなどが含まれており、全体の平均組成としてはH_2Pc (PCl_<0.5>F_<1.4>O_<4.1>)_<0.3>であることが明らかとなっている。物性として注目される電気伝導度は、室温で約10S/cmとかなり高い値を示した。
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