2002 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー代謝調節における新規消化管ホルモン グレリンの役割と作用分子機構
Project/Area Number |
14657132
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
中里 雅光 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (10180267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 秀樹 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (10305097)
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Keywords | 消化管ペプチド / 摂食調節 / グレリン / 消化管内分泌細胞 / 迷走神経 / 成長ホルモン |
Research Abstract |
グレリンは、主に胃で産生され、強力な成長ホルモン分泌活性に加え、摂食亢進や体重増加、消化管機能調節などエネルギー代謝調節に重要な作用を持つ。グレリンのラット静脈内投与により摂食亢進がおこり、また、絶食によりグレリン血中濃度および胃のグレリンmRMA発現が増加することから、グレリンは末梢の空腹シグナルとして中枢に作用している。胃グレリンの中枢への伝達経路を明らかにし、末梢グレリンが成長ホルモン分泌や摂食促進に作用するメカニズムを検討した。迷走神経を切断したラットおよび迷走神経求心線維を特異的に遮断するカプサイシンを投与したラットでは、グレリンによる摂食促進作用は起こらなかった。一方、脳室内に投与したグレリンは迷走神経切断やカプサイシン前投与にも拘わらず、摂食亢進作用を示したラットへのグレリンの静脈内投与は、視床下部のNPYニューロンやGHRHニューロンを活性化したが、迷走神経遮断ラットへのグレリン投与では、これらの神経細胞を活性化しなかった。グレリン受容体は迷走神経求心性ニューロンで産生され、求心線維末端へ輸送される。またグレリンの静脈内投与は、迷走神経胃枝求心線維の電気活動を抑制する。胃から分泌されるグレリンは、迷走神経末端に存在する受容体に直接作用して迷走神経求心路の電気活動を抑制することにより、成長ホルモン分泌や空腹に関する情報を脳内へ伝達している。グレリンの神経線維は視床下部弓状核より視床下部外側野に投射しており、オレキシンニューロンとシナプスを形成していた。グレリンの脳室内投与によりオレキシンニューロンの23±8%にFos蛋白が発現したが、MCHニューロンには発現しなかった。グレリンの摂食亢進作用は抗オレキシン抗体を前投与することによって抑制され、NPY Y1受容体の拮抗剤を共投与することにより消去された。グレリンの摂食亢進作用はオレキシン欠損マウスにおいて野生型マウスと比べて有意に低かった。胃で産生されるグレリンは成長ホルモン分泌を亢進するばかりでなく、これまで明らかになった摂食亢進作用を持つ神経ペプチドの中で唯一、末梢投与によって摂食を亢進させる。グレリンの摂食亢進作用は、迷走神経の求心路を遮断することにより消去され、成長ホルモン分泌作用は抑制される。さらに、グレリンの末梢投与により迷走神経求心路の電気活動は減少する。このことからグレリンの情報は、迷走神経の求心路を介して中枢に伝達されていると考えられる。グレリン受容体は迷走神経節によって合成され、迷走神経の神経線維内を末梢に輸送されていることを明らかにした。グレリンは胃から内分泌もしくは傍分泌することにより、迷走神経を介して成長ホルモン分泌や摂食亢進に作用している。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Date Y, Nakazato M, Hashiguchi S, Dezaki K, Mondal MS, Hosoda H, Kojima M, Kangawa K, Arima T, Matsuo H, Yada T, Matsukura S.: "Ghrelin is present in pancreatic α-cells of humans and rats and stimulates insulin secretion"Diabetes. 51. 124-129 (2002)
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[Publications] Shiiya T, Nakazato M, Mizuta M, Date Y, Mondal MS, Tanaka M, Nozoe S, Hosoda H, Kangawa K, Matsukura S.: "Plasma ghrelin levels in lean and obese humans and the effect of glucose on ghrelin secretion"J Clin Endocrinol Metab. 87. 240-224 (2002)
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[Publications] Date Y, Murakami N, Toshinai K, Matsukura S, Nijima A, Matsuo H, Kangawa K, Nakazato M.: "The role of the gastric afferent vagal nerve in ghrelin-induced feeding and growth hormone secretion"Gastroenterology. 123. 1120-1128 (2002)
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[Publications] Hayashida T, Nakahara K, Mondal MS, Date Y, Nakazato M, Kojima M, Kangawa K, Murakami N.: "Ghrelin in neonatal rats : distribution in stomach and its possible role"J Endocrinol. 173. 239-245 (2002)
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[Publications] Toshinai K, Date Y, Murakami N, Shimada M, Guan J, Wang Q, Funahashi H, Sakurai T, Shioda S, Matsukura S, Kangawa K, Nakazato: "Ghrelin-induced food intake is mediated via the orexin pathway"Endocrinology. 144. 1506-1512 (2003)
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[Publications] Tanaka M, Naruo T, Nagai N, Kuroki N, Shiiya T, Nakazato M, Matsukura S, Nozoe S.: "Habitual binge/purge behavior influences circulating ghrelin levels in eating disorders"J Psychiatr Res. 37. 17-22 (2002)
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[Publications] 中里雅光: "脳と栄養"斉藤昌之, 鳥居邦夫, 青山頼孝 (印刷中). (2003)