2002 Fiscal Year Annual Research Report
炭素のミクロ構造解析に基づいたダイオキシンの低温再合成の機構解明と抑制法
Project/Area Number |
14658166
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大塚 康夫 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教授 (20091663)
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Keywords | 炭素構造 / 塩化水素 / 銅触媒 / ダイオキシン / 低温再合成 |
Research Abstract |
本研究では、廃棄物焼却時のダイオキシンの主要発生経路である低温再合成(de novo合成)のメカニズムを、炭素物質のミクロ構造の解析結果に立脚して明らかにし、ダイオキシンの排出抑制を可能にする基礎原理の確立を目的としている。具体的には、de novo合成条件下におけるダイオキシン前駆物質の生成について、炭素の反応サイト量(含酸素官能基や活性表面積)、塩素を含む炭素や銅触媒からのHClの生成挙動、ならびに、炭素上での塩素化合物の化学吸着や結合形態を調べ、炭素-塩素-銅の相互作用のケミストリーを解明し、ダイオキシンの発生制御の指導原理を構築することを目指している。 そこで、本年度は、ダイオキシンの低温再合成サイトである炭素の反応活性サイトの定量と、塩素源となるHClの発生プロファイルの検討に着目した。試料としては、鉄鉱石の焼結工程で使用される無煙炭やコークス、ならびに、その過程で排出されるダスト、モデル物質として、ダイオキシンの生成に触媒作用を示す塩化銅(CuCl_2)を添加したグラファイトの酸化処理試料を用いた。炭素の活性サイトに関しては、昇温脱離(TPD)実験とこれに引き続く昇温酸化(TPO)実験を行い、発生するCOとCO_2を分析し、そのプロファイルのピーク分雌により、COOH基、炭酸塩、ラクトン、酸無水物の存在を明らかにした。その結果、低温再合成の温度領域では、炭素中のCOOH基が活性サイトになる可能性が示唆された。同様に、これらの試料のTPDとTPOにおけるHClのオンライン分析を行い、無機塩化物、有機塩酸塩、有機塩素化合物のモデル実験の結果とあわせて、ダイオキシンのde nove合成過程では、有機塩酸塩より生成するHC1が塩素源になりえることを示した。
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