2003 Fiscal Year Annual Research Report
超高感度希ガス質量分析装置の製作によるマントル起源流体のレーザー希ガス局所分析
Project/Area Number |
14703001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角野 浩史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (90332593)
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Keywords | 質料分析 / 希ガス同位体 / 同位体地球化学 / イオン化 / マントル捕獲岩 |
Research Abstract |
本研究の今年度の目標は、昨年度に製作した、既存の希ガス質量分析計(英Micromass社製VG5400)に搭載可能な四重極レンズイオン源の実用化と、マントル起源物質(マントル捕獲岩)中の大きさ10μm程度の流体包有物から選択的に希ガスを抽出する手法の確立であった。四重極レンズイオン源については、はじめに質量分析計に搭載した段階では、予想していた感度が全く達成されず、また最高感度が得られる四重極レンズ電圧も、Lu and Carr(1963)による理論計算と大きく異'なっていた。そこでイオン光学設計ソフトSIMION-3Dを用いてイオン軌道をシミュレートしたところ、従来の理論計算ではイオン化箱から射出される平行ビームを仮定していたのに対し、シミュレーションではイオン化箱の出射スリットによるレンズ効果のため平行ビームにならず、これを補正するよう四重極レンズを働かせる必要があることが分かった。これに基づき様々な修正を加えた結果、現時点でイオン化箱部分については十分なイオン化率が達成できている。また流体包有物からの希ガス抽出に用いるレーザーとして、米国New Wave Research社製レーザーアブレーション装置UP-213を今年度予算で導入した。本装置は紫外レーザーにより、赤外レーザーでは光が透過して蒸発させることができなかった透明鉱物に微小な穴を開けることができる点が特徴である。実際にマントル捕獲岩中のかんらん石について試してみたところ、最小で10μm程度のほぼ完全な円筒状の穴を開けられることが確認できた。但しこのレーザーを利用するための真空チャンバー用の窓材が、希ガス元素の一つであるヘリウムを透過する特性を持つ石英ガラスに限られるという問題点があるため、現在二重窓構造を採用した試料チャンバーの製作を行なっている。
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