2003 Fiscal Year Annual Research Report
アレルゲン構成糖鎖を用いた新規免疫療法およびワクチン開発の試み
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14704043
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡野 光博 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (60304359)
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Keywords | 糖鎖 / IgE / T細胞 / アレルゲン / 治療薬 / スギ花粉症 |
Research Abstract |
昨年度の研究では、スギ花粉の主要アレルゲンCry j 1を構成する遊離型糖鎖を精製し、本糖鎖が特異的応答を制御するのか検討した。その結果、Cry j 1を構成する糖鎖M3FXはそれ自身はIgEやT細胞エピトープとはならない一方で、M3FXにはCry j 1に特異的なT細胞応答、特に増殖応答およびIL-4産生の抑制作用があることが明らかとなった。このことは糖鎖を用いたスギ花粉症治療の可能性を示唆した。今年度はまずこれらの結果に再現性があることを確認し、論文投稿を行ない最終的にClinical and Experimental Allergyへアクセプトされた。さらに今年度は多価アレルゲン糖鎖の免疫系への関与を検討した。まず花粉より抽出した糖鎖M3FXをポリリジンに結合させ、多価糖鎖とした。さらにBALB/cマウスより腹腔マクロファージを採取しポリリジン結合M3FXを添加しマクロファージのサイトカイン産生について検討した。その結果、対照であるポリリジン単独刺激の場合と比較してポリリジン結合M3FXでの刺激にてIL-10産生の増強が認められた。すなわちM3FXは多価の状態では自然免疫系に作用する可能性が示唆された。次いでこれまでに糖鎖構造が未知な花粉アレルゲンの糖鎖構造の同定を試みた。Jun a 1は花粉症を引き起こすヒノキ科ビャクシンの主要アレルゲンである。Jun a 1を精製し、さらにヒドラジン処理を行い糖鎖を切り出し、エクソあるいはエンドグリコシダーゼを用いたHPLCにて2次元マッピングを行った。その結果、Jun a 1にはこれまで報告のあった糖鎖構造とは異なり、その側鎖にルイスa糖鎖を有することが明らかとなった。ルイスa糖鎖は免疫活性を有することが知られており、この新規同定糖鎖が免疫系に対して多彩な作用を有する可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Watanabe T, Okano M, Hattori H, Yoshino T, Ohno N, Ohta N, Sugata Y, Orita Y, Takai T, Nishizaki K.: "Roles of FcγRIIB in nasal eosinophilia and IgE production in murine allergic rhinitis."American Journal of Resriratory and Critical Care Medicine. 169巻・1号. 105-122 (2004)
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[Publications] Okano M, Kimura Y, Kino K, Michigami Y, Sakamoto S, Sugata Y, Maeda M, Matsuda F, Kimura M, Ogawa T, Nishizaki K.: "Roles of major oligosaccharides on Cry j 1 in human IgE and T cell responses."Clinical and Experimental Allergy. In press. (2004)
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[Publications] 岡野光博: "共刺激シグナルを介したアレルギー性鼻炎の病態と治療への可能性"アレルギー科. 15巻・1号. 50-57 (2003)
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[Publications] 岡野光博: "難治性副鼻腔炎の病態と術後管理"アレルギー. 53巻・1号. 1-7 (2004)
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[Publications] 岡野光博: "糖鎖抗原とアレルギー性鼻炎"アレルギーの臨床. 23巻・6号. 427-431 (2003)
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[Publications] 岡野光博: "花粉症は遺伝するか?-感作と発症の遺伝子-"Progress in Medicine. 23巻・12号. 79-84 (2003)
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[Publications] 岡野光博ほか(今野昭義編): "新しい診断と治療のABC12 アレルギー性鼻炎"最新医学社. 308 (2003)