2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の幼児教育におけるアソシエーショニズムの系譜に関する研究
Project/Area Number |
14710176
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
福元 真由美 東京学芸大学, 講師 (00334459)
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Keywords | 保育所 / 協同組合 / セツルメント / 賀川豊彦 / 平田のぶ / 東京帝国大学セツルメント / 志賀志那人 |
Research Abstract |
本年度は、保育のアソシエーションとして機能した施設として、協同組合やセツルメントを基盤に成立した協同組合型保育施設をとりあげ、これまで個別に検討してきた次の4つの事例について総合的に考察した。 (1)志賀志那人の大阪市北市民館保育組合(1925年設立)、(2)東京帝国大学セツルメントの託児部(1925年設立)、(3)賀川豊彦の光の園保育組合(1928年設立)、(4)平田のぶの子供の村保育園(1931年設立) その結果、明らかになったことを整理すると以下の3点にまとめられる。 1)上記の4つの保育施設は、労働運動から距離を置いた立場で社会変革的志向を持った住民の結合を基盤に保育組織を立ち上げていた。2)都市部における地域社会の再編と子育ての協同化を課題として、保育の営みを中心に新たな生活空間を協同で創出しようとした。3)都市部で形成された衛生や健康という問題群が、保育実践にも導入されて幼児の身体の近代化が組織的に進められた。 以上のことから、上記の保育施設は、労働運動の論理を思想的基盤とする保育所や都市の住民と生活を管理・統制する役割を担った公設の保育所とは異なる位置に存在していたと考えられる。個別の事例に関しては、賀川豊彦・志賀志那人におけるオーエン主義とキリスト教社会主義の思想と実践との関係、平田のぶにおける母性思想にもとづく母親の連帯、東京帝国大学セツルメント託児部における子どもの人間関係に関わる規範と秩序の問題がとりあげられた。本年度の研究成果は、日本乳幼児教育学会第12回大会における研究発表「近代日本の年セツルメントにおける保育の位相」で報告された。
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