2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における帝国意識の形成過程と植民地台湾との人的移動の関連をめぐる研究
Project/Area Number |
14710231
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
松田 京子 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (20283707)
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Keywords | 日清戦争 / 台湾領有戦争 / 台湾原住民 / ツーリズム / 台湾博覧会 / 帝国意識 |
Research Abstract |
本年度はまず、台湾領有戦争での「戦地」としての台湾経験の問題を、台湾領有戦争との一続きの戦争とされる日清戦争での「戦地」体験、つまり、日本軍兵士にとっての中国体験とそこからもたらされる中国認識との比較という観点から研究をすすめた。そのため本年度は特に、中国側の日清戦争に関する資料収集に力点を置き、二回にわたり、中国(北京)への資料調査旅行を実施し、資料的充実をはかった。これらの資料については現在分析中であり、近日中に中間考察を、国内の研究会で発表する予定である。 次に、台湾民衆の日本「内地」旅行の問題を、日本民衆の台湾旅行との相互関連性に留意しつつ考察するという観点から、本年度は1935年に台湾で行われた「始政四〇周年紀年台湾博覧会」に焦点をあて、台湾におけるツーリズムの展開の特徴を考察した。そこから(1)台北を主会場としつつも台湾全土でイベントが開催された「台湾博覧会」が、台湾におけるツーリズムの展開の起爆剤となったこと。(2)1930年代に入ると、台湾旅行のモデルコースが、様々な宣伝媒体によって日本「内地」の民衆に提示されており、そのなかで「蕃地」観光が台湾旅行の一つの日玉として扱われたこと。(3)このようないわば台湾原住民の「観光資源」化と、台湾総督府による1930年代の台湾原住民政策が密接に関連すること。以上の三点を、国内調査によって収集した資料を分析することで、具体的に解明した。これらの研究成果は、思想史・文化理論研究会などの研究会で報告を行った。現在、さらに新たな論点を加えて、論文としてまとめる準備をすすめている。 最後に、本年度は近代日本の帝国意識形成に関して、昨年度までに発表してきた研究成果を単著『帝国の視線-博覧会と異文化表象-』としてまとめ、刊行した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] MATSUDA KYOKO: "INO KANORI'S "HISTORY" OF TAIWAN"HISTORY and ANTHROPOLOGY. Vol.14,No.2. 177-196 (2003)
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[Publications] 松田 京子: "帝国の視線-博覧会と異文化表象-"吉川弘文館. 225 (2003)