2003 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期ドイツの都市・領主・農民関係と調停システム
Project/Area Number |
14710259
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 俊之 金沢大学, 文学部, 助教授 (00303248)
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Keywords | 中世後期 / 都市 / 領域政策 / 体僕制 / 農民蜂起 / 調停・仲裁 |
Research Abstract |
本年度の実施計画に基づき、中世後期における都市・領主・農民関係の実態について、特に領主・農民間の紛争とその解決のありように焦点を絞って考察した。まず、15世紀のスイス北西部を対象としたいくつかの研究が指摘しているのは、領主による「体僕制」の導入以降に農民蜂起が頻発しているという事実であり(ブリックレetc.)、またそれらの紛争の解決に、近隣の有力都市が何らかの関与をしているということである(リップマンetc.)。充当された旅費を利用して夏期休暇にスイスに赴き、Staatsarchiv Basel-Stadt(バーゼル国立<都市>古文書館、所在地:バーゼル)でUrkundenbuch der Stadt Baselなどを閲覧するなどして、こうした特徴が都市側の文書として表れていることをいくつか確認した。 さらにStaatsarchiv Basel-Landschaft(バーゼル国立<邦>古文書館、所在地:リースタール)では、バーゼル近郊の村落プラッテルンの領主ハンス・ベルンハルト・フォン・エプティンゲンと近隣の領主たちとの間の紛争、ならびに所領農民との紛争が、15世紀後半において頻発しており、そのうちのいくつかについて領主側からバーゼル(都市参事会)への訴訟(Klage)、反訴(Gegenklage)が繰り返されている事実を確認した。つまりそこから、この地域においては有力都市(バーゼル)の調停・仲裁機能が領域秩序の維持に重要な役割を果たしており、それに依存した形でそれぞれが秩序維持に一定の努力を傾けていたことが認められる。 そのうちの一事例に関して、手稿史料(Dokument Urkunde Nr.537)の解読に取り組んでいるが(マイクロフィルムで入手)、単語表記、文法は正書法確立以前のもので、しかも乱雑な速記であるため、判読が困難であり、現在までのところ捗っていない。
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