2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14730005
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 昭彦 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教授 (10282873)
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Keywords | 世代重複モデル / 動学的貿易モデル / 特化 |
Research Abstract |
本研究では,無限計画期間を持つ代表的個人ではなく,新しい家計が経済に誕生する世代重複モデルにより,動学経済における貿易パターンを分析することであった. 定常状態において異なる世代の個人が同時に存在するため,経済全体の資本蓄積パターンは個人の蓄積パターンとは異なる.このとき新しい世代は労働力だけを持って金融資産は0で現れるため,経済全体の資産蓄積パターンは毎期毎期変更される可能性を持つ. これは,上記に示した代表的個人モデルでの分析とは異なり,交易条件に応じてその国の資本量が変化するということを意味し,完全特化は必要なくなる.つまりヘクシャー・オーリンモデル的な貿易パターンの決定が予想される. 平成14年度は解析的な分析を行った.まず,産業が2部門存在する動学的な世代重複モデルを構築した.そのモデルを利用し,開放経済に応用し交易条件や人口の増加が産業構造に与える影響を分析した.その結果以下のようなことがわかった. まず,世代重複モデルにおいては,代表的個人モデルとは異なり,完全特化は必然ではない. これは,いままでの動学的貿易モデルの結論が特殊な結果であったことを示している.また,資本蓄積経路が一意でないという意味で,生産要素が内生化されているため,生産や超過需要が"奇妙な"反応を示す可能性があるということもわかった."奇妙な"というのは,輸入財価格の上昇が輸入を増やしたり,輸入財産業の生産を(その逆も)という結果をもたらすということである.M.C.Kemp and R.W.Jonesが"Variable Labour Supply and the Theory of International Trade", Journal of Political Economy, 70,30-36.で,内生的労働供給下での貿易モデルを考察した際に得られた結論と類似している.
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