2003 Fiscal Year Annual Research Report
欧州企業のグローバル化とサプライヤー・システムの再編成―電機企業ABB社を中心に
Project/Area Number |
14730115
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Research Institution | Kagoshima Prefectural College |
Principal Investigator |
岸田 未来 鹿児島県立短期大学, 商経学科, 講師 (60342424)
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Keywords | スウェーデン / サプライヤー / ABB社 / アセア社 / 変圧器 / 鋼材調達 / ノルベリ / シュラハンマー・バルク社 |
Research Abstract |
15年度はABB杜の前身であるアセア社の原材料調達体制が,1970年代の石油危機を経ていかに変化を遂げたのか,またその変化が地域経済に与えた影響を検討するため,次のことを行った。1.1970年代におけるスウェーデン電機産業(重電を中心に)の競争関係の変化についての検討,2.アセアの社内資料を中心とした資料収集,3.調達体制の変化に伴う地域経済への影響についてのヒアリング調査。 1.アセア社の1970年代における経営状況の変化を明らかにするために,同社の主力製品であった送変電機器(変圧器)分野を中心に,世界的な変圧器市場におけるアセア社の変圧器製品の競争状況についての概括を行った。変圧器を選択したのは,変圧器がアセアの調達する鋼材を利用して競争力を有していた製品であったためである。明らかになったことは,高度成長期に大型変圧器を中心として競争力を持っていたアセア社は,石油ショック以降の輸出市場における日本企業の台頭によって市場シェアを失い,その回復のために生産の合理化等の努力を行ったが,国内における高賃金・生産体制の硬直性によって,徐々に国内中心の生産体制を転換せざるをえなくなったということであった。アセア社は1980年代を通じて生産を多国籍化してゆき,1988年にはスイス企業との合併によってABB社を設立した。(この内容については,2004年3月提出の博士論文の一章分として論文化した) 2.社内資料を中心とした資料収集では,1の変圧器製品に関わる資料と,アセアの鋼材調達に関わる資料(同社のグループ子会社であるシュラハンマース・バルク社の鉄鋼事業について)を中心に,同社の中央アーカイヴスにて収集した。 3.ヒアリング調査は,1980年にリストラクチャリングされたシュラハンマース・バルク社の製鋼事業が所在していたノルベリ・コミューンにて行った。コミューンでは,1970年代後半から1980年代前半にかけて,シュラハンマース・バルク社の事業閉鎖がどのように行われたのか,同杜に雇用を大きく依存していたノルベリ・コミューンが,事業閉鎖後の地域雇用対策をいかに行ったのかを中心にヒアリングを行った。同地域では,地域雇用対策として,シュラハンマース・バルク社の親会社であるアセア社とコミューンとの共同による地域雇用創出プログラム(ノルベリ・モデルと呼ばれる)が行われたことが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)