2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740162
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
芹生 正史 福井大学, 工学部, 助教授 (00293407)
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Keywords | スペクトル / 時空構造 / 重力崩壊 / 準正規モード |
Research Abstract |
(1)時空構造をスペクトル情報で記述する研究。重力崩壊や特異点を含んだ、自明でない時空構造の場合の研究を昨年度に引き続き集中的に行った。具体的に扱いやすく内容が豊富なモデルとして、回転圧効果を考慮した軸対称重力崩壊の時空を中心に解析した。これについては(A)z軸方向に対称性を課したモデル、および(B)z軸方向に対称性を課さない、より一般性の高いモデル、の双方について分析を行った。(A)は、昨年度の段階で、先行する他者の研究結果の不備を明らかにし、回転圧効果により、一般に特異点が形成されないことを見出していたが、今回はこれに定理としての厳密な証明を与えて論文化し、最終的に決着をつけた。(最終結果をまとめた論文は現在審査中)。(B)は、物質分布をかなり自由に変更できるため、物質の初期配置と重力崩壊の最終段階との関係に関する研究に有用であると考えられる。モデル(A)の解析手法を拡張する形で、引き続き分析を行う計画である。 (2)時空上の準正規モードの物理的意味を解明する研究。スペクトル情報の意義を明らかにするため、準正規モードの物理的意味の解明に取り組んだ(この一部は、所属研究グループにおいて、博士後期課程院生も交えて共同研究の形で行った)。種々のポテンシャル・モデルを設定し、量子力学の枠組みの中で、具体的な解析的研究を行った。波束がポテンシャルで散乱されながら無限遠方に散逸していく過程に準正規モードが関与していると当初予想したが、この現象には準正規モードが全く関係しないことが明らかになった。Rindler時空上でも同様の解析を行ったが結果は同じであった。このことは、準正規モードは、通常の散乱問題の範疇では捉えきれない物理現象と関連していることを示唆している。言い換えると、通常の枠組みを拡張する必要のある現象(トンネル時間・不安定系の崩壊時間等)をも視野に入れた解析が有効であることが予想される。このため、これらの現象を統一的に記述出来る新しい枠組みの構成も視野に入れながら、現在も研究を続行している。 (3)スペクトル・スキームは、無限個の時空幾何学の情報を取捨選択して、有限個の価値の高い情報のみを抽出する枠組み、と捉えることもできる。このような幾何情報の取捨選択が、宇宙論にとってどのような意味を持つのかは非常に重要な問題だと思われる。昨年度に引き続き、集合論と論理、情報理論、カオス理論などを援用しながら、この点を検討した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] M.Seriu: "Comparing shapes -- the spectral scheme and its application to cosmology --"Proceedings of International Conference on Computer, Communication and Control Technologies (CCCT '03) and The 9th International Conference on Information Systems, Analysis and Synthesis (ISAS '03). 第VI巻. 169-174 (2003)
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[Publications] M.Seriu: "Nonlinearity in General Relativity and Its Influence on Cosmology"Technical Report of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (Japan). NLP2003-127. 1-6 (2003)
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[Publications] M.Seriu: "Effect of the Rotational Pressure on the Cylindrical Shell Collapse : A Model Analysis"Proceedings of the 13th Workshop on General Relativity and Gravitation. (出版中). (2004)