2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 研介 東京大学, 物性研究所, 助手 (10302803)
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Keywords | 量子ドット / 電子の位相 / ファノ効果 / コヒーレンス / スピン反転過程 |
Research Abstract |
本研究は,微細加工によって作り出されたナノ構造において,干渉効果や多体効果に起因する新しい現象を見出すことを目的としている。系としては,半導体ヘテロ接合界面上に形成された2次元電子系を,直径1ミクロン程度のアハラノフボームリングに加工し,さらに,量子ドットを埋め込んだものを用いている。量子ドットは典型的な0次元系であり,電子の「粒子」としての性質が反映されるシステムである。一方,アハラノフ・ボーム(AB)効果は電子の「波」としての性質が重要である系である。この両者を組み合わせることで量子ドットを通った伝導電子の位相の情報を知ることができる。本年度はこの系において,次の二つの新しい知見を得た。 (1)ファノ効果 リングにドットを埋め込んだ系でファノ効果を見出した。これはリング内の連続状態にある電子と,ドット内の離散準位にある電子との配置間相互作用によって生じる効果であり,ナノ構造においては本研究が初めての観測である。しかも,この系は多くの点で制御可能であり,ファノ効果の検証実験としてはこれまでで最良のものである。 (2)スピン反転によるデコヒーレンスの検証 量子ドット中のスピン状態については,現在,世界中で盛んに研究が行われている。我々は,上記の系を用いることで,電子が量子ドットを通過する際に,ドット内にスピンが存在する場合,スピン反転過程によってコヒーレンスが破られる,という予想を初めて実験的に検証した。この研究は,量子ドットの伝導において,スピンが重要な役割を果たしていることを明瞭に示すものである。 以上のように,本年度は新しい二つの知見が得られた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Kobayashi, H.Aikawa, S.Katsumoto, Y.Iye: "Tuning of the Fano Effect through a Quantum Dot in an Aharonov-Bohm Interferometer"Physical Review Letters. 88. 256806 (2002)
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[Publications] K.Kobayashi, H.Aikawa, S.Katsumoto, Y.Iye: "Observation of an enhanced Aharonov-Bohm effect"Journal of Physics and Chemistry of Solids. 63. 1301 (2002)
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[Publications] K.Kobayashi, H.Aikawa, S.Katsumoto, Y.Iye: "Reduction of quantum decoherence in non-local resistance measurement"Microelectronic Engineering. 63. 53 (2002)
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[Publications] 小林研介: "波と粒子が出会うとき"パリティ. 17. 67 (2002)
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[Publications] K.Kobayashi, H.Aikawa, S.Katsumoto, Y.Iye: "Probe-Configuration-Dependent Decoherence in an Aharonov-Bohm Ring"Journal of Physical Society of Japan. 71. L2094 (2002)
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[Publications] 小林研介, 相川恒, 勝本信吾, 家泰弘: "量子複合系の物理:メゾスコピックFano効果"固体物理. 38. 29 (2003)