2002 Fiscal Year Annual Research Report
f-電子系におけるスピンと軌道揺らぎの競合と協調に関する研究
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14740219
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
堀田 貴嗣 特殊法人日本原子力研究所, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (00262163)
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Keywords | f-電子 / 電子相関 / 超伝導 / 磁性 / 軌道自由度 / スピン自由度 / バンド計算 / 結晶場 |
Research Abstract |
f-電子系化合物の磁性と超伝導の微視的機構をスピン・電荷・軌道自由度の競合と協調という観点から理解するために、115系と総称されるHoCoGa_5型の結晶構造を持つ化合物を典型物質に選んで研究を開始した。まず、相対論的バンド計算の手法を用いて、CeTIn_5(T=Co, Ir)およびAnCoGa_5(An=U, Np, Pu)のエネルギーバンド構造とフェルミ面を明らかにした。その結果、(1)フェルミエネルギー近傍においては、f-電子とp-電子が混成してバンドを形成すること、(2)f-電子数の違いにもかかわらず、Ce115とPu115はよく似た複数の擬2次元フェルミ面構造を示すこと、(3)115系化合物においてはrigid bandの描像が良いためにf-電子とd-電子の総数でフェルミ面構造が決まり、実際、UNiGa_5とNpCoGa_5のフェルミ面がほぼ同一であることなどを見出した。特に、(3)に基づけば、既知の115系化合物に対する実験およびバンド計算結果から、複数の擬2次元フェルミ面構造を持つ場合に超伝導が発現するという可能性が現象論的に示される。これにより、たとえば、PrFeGa_5やNpNiGa_5が超伝導になる可能性が示唆され、今後の115系化合物のひとつの合成指針となる。 次に、上記の相対論的バンド計算結果に基づき、磁性および超伝導を微視的観点から理解するための電子模型をj-j結合描像に基づいて構築した。この模型は、強束縛近似によるf-およびp-電子の遍歴項と混成項、f-電子間相互作用項、そして結晶場項からなる。このうち、遍歴項と混成項に含まれるパラメターについては、バンド計算結果との直接比較によってフェルミ面を再現するように決定することができる。このようにして得られたモデルは3つのクラマース2重項を含むが、異なるクラマース項を区別するための「軌道」とクラマース縮重を区別するための「スピン」を導入すれば、d-電子系においてよく知られた多軌道ハバード模型となる。この模型を厳密対角化法や揺らぎ交換近似法によって解析し、CeTIn_5は反強磁性スピン揺らぎによって誘起されたd-波超伝導体であるが、結晶場効果によって軌道揺らぎが抑えられた状況でd-波超伝導が起こることを見出した。また、j-j結合描像におけるf-電子の電子・正孔対称性に基づけば、PuCoGa_5の超伝導はCeTIn_5と類似の機構で定性的に理解でき、5f電子が4f電子よりも遍歴性が強く、電子系のエネルギースケールも大きくなるために超伝導転移温度も上昇することがわかった。
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[Publications] T.Maehira, T.Hotta, K.Ueda, A.Hasegawa: "Electronic Structure and Fermi Surface of AnCoGa_5 (An=Np and Pu)"Physical Review Letters. (発表予定).
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[Publications] T.Hotta, K.Ueda: "Construction of a microscopic model for f-electron systems based on a j-j coupling scheme"Physical Review B. (発表予定).
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[Publications] T.Maehira, T.Hotta, K.Ueda, A.Hasegawa: "Relativistic Band-Structure Calculations for CeTIn5 (T=Ir and Co) and Analysis of the Energy Bands by Using Tight-Binding Method"Journal of the Physical Society of Japan. (発表予定).
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[Publications] T.Hotta, K.Ueda: "Effect of orbital degeneracy on triplet superconductivity in f-electron systems"Acta Physica Polonica B. 34(No.2). 443-446 (2003)
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[Publications] T.Maehira, T.Hotta, T.Takimoto, K.Ueda, A.Hasegawa: "Tight-Binding Model for Heavy Fermion Compounds : Cnostruction of f-p model"Acta Physica Polonica B. 34(No.2). 1023-1026 (2003)
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[Publications] T.Takimoto, T.Hotta, T.Maehira, K.Ueda: "Spin Fluctuation Induced Superconductivity Controlled by Orbital Fluctuations"Journal of Physics : Condensed Matter. 14(No.21). L369-L375 (2002)