2003 Fiscal Year Annual Research Report
大気大循環の年々変動における赤道準二年周期振動の役割
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14740276
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 陽子 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50324603)
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Keywords | 対流圏-成層圏結合系大気 / 年々変動と季節内変動 / 成層圏突然昇温現象 / 赤道準二年周期振動 / 惑星規模ロスビー波 / 3次元大気循環モデル / パラメータ走査長時間積分 / 統計的有意性 |
Research Abstract |
昨年度の終わりに、冬季成層圏循環の季節内変動に対する赤道準二年周期振動(QBO)の影響を調べる二つめのパラメータスイープ実験を行なった。今年度6月に雑誌に掲載された一つめの実験では、赤道域下部成層圏の東酉風に与える強制の強さを実験パラメータとして走査し、帯状平均量を解析していたのに対して、今回の二つめの実験では、現実のQBOにおいて東西風分布が下方伝播する際の位相を実験パラメータとして8つの状況を設定し、それぞれ境界条件を固定した長時間積分を行なって、帯状平均量のほか、特に惑星規模波動の活動を表す2次のフラックス量に注目して、今年度にかけて統計解析を行なってきた。 今回も、それぞれの時間積分において約70〜200回の多数の突然昇温イベントを抽出することができ、統計的有意性に留意した議論を行なうことができた。また波フラックスを解析することにより、QBO西風相において昇温が起こる際には、他の位相で起こる昇温の前にくらべて、対流圏起源惑星規模波の活動の強まりが比較的早い時期から顕著にみられることが示された。一般に、QBO西風相では惑星規模波による運動量輸送は赤道域へ向かいがちで成層圏極域に達するものが少ないため突然昇温が起こりにくいとされているが、その西風相でも昇温が起こるという場合には、早期から強まった波活動によって対流圏から輸送される運動量が時間をかけて蓄積されることにより昇温を起こすに到る、ということが示唆される。さらに、昇温ピーク時の成層圏極域の温度の高さと、昇温の30日前から平均した対流圏起源波フラックスの強さとの関係について、統計解析を進めた。 上記の成果は、現在、論文にまとめているところである。また、昨年度同様、現実大気データの見直しも試みており、来年度には結果をまとめる予定である。
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[Publications] Yoko Naito, Masakazu Taguchi, Shigeo Yoden: "A parameter sweep experiment on the effects of the equatorial QBO on stratospheric sudden warming events"Journal of the Atmospheric Sciences. Vol.60. 1380-1394 (2003)