2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740335
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 講師 (70290905)
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Keywords | 液体の積分方程式理論 / 非経験的分子軌道法 / 化学反応 |
Research Abstract |
従来の分子性液体の統計力学理論は平衡状態にある液体を扱うための理論である。このため、RISM-SCF/MCSCF法などの量子化学の手法と組み合わせた理論も、溶媒和が平衡状態にある分子の電子状態や液体構造を調べることしかできない。実際の化学過程に照らして考えてみると、これは、溶質分子における化学反応等、注目するイヴェントに比べて溶媒が無限に速く緩和していると仮定した近似に対応している。 本研究課題では、RISM-SCF/MCSCF法を平衡状態以外へ拡張した理論を構築し、実際の溶液内化学過程における溶媒の分子論的な役割を明らかにすることを目標としている。例えば、こうした非平衡の効果は、電子移動反応や分子のイオン化における反応速度や溶媒再配向エネルギー(λ)に反映されると考えられる。本年度は、溶媒和とそれに伴う電子状態変化を分子を構成する原子レベルに分割することで、化学的直感に対応させて現象を解析する方法を提案した。例えば、水中の2-ピリドンの互変異性化は典型的なプロトン移動反応であるが、この反応において従来考えられていたヘテロ原子の重要性はむしろ低く、異性に直接関与しているプロトンの溶媒和に伴う電子状態変化が極めて重要であることを見い出した。また、こうした方法をSN2反応に適用して、現在もっとも広く角いられているPCM法をRISM-SCF/MCSCF法と比較することを行った。これらは溶液内化学反応を扱う電子状態理論についての基本的性質についての知見を与えるものであり、学術論文として発表される予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Sato, Y.Kobori, S.Tero-Kubota, F.Hirata: "Theoretical Study on Electronic and Solvent Reorganization Associated with a Charging Process of Organic Compounds : I. Molecular and Atomic Level DescriDtion of Solvent Reorganization"J.Chem.Phys.. 119. 2753 (2003)
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[Publications] T.Yamazaki, H.Sato, F.Hirata: "A Quantum Solute-Solvent Interaction Using Spectral Representation Technique Applied to the Electronic Structure Theory in Solution"J.Chem.Phys.. 119. 6663 (2003)
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[Publications] H.Tamura, H.Yainazaki, H.Sato, S.Sakaki: "Iridium-Catalyzed Borylation of Benzene with Diboron. Theoretical Elucidation of Catalytic Cycle Including Unusual Iridium(V) Intermediate"J.Am.Chem.Soc.. 125. 16114 (2003)