2002 Fiscal Year Annual Research Report
有機化学的手法による内包フラーレン類の合成に関する研究
Project/Area Number |
14740348
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 助手 (40314273)
|
Keywords | フラーレン / 開口フラーレン / C_<60> / 8員環開口部 / 12員環開口部 / 13員環開口部 / トリアジン / 硫黄 |
Research Abstract |
平成14年度の研究計画に従って研究を行い、以下に示す結果を得た。 開口部に窒素原子を有する開口フラーレンを合成することを目的として、フラーレンC_<60>と5,6-diphenyl-3-(2-pyridyl)-1,2,4-triazine 1との熱反応をオルトジクロロベンゼン溶液中で行ったところ、85%収率(反応したC_<60>基準)で、1:1付加体2を得た。2は1がC_<60>と[4+2]付加環化反応し、引き続く脱窒素、分子内[4+4]付加環化反応、逆[2+2+2]環化反応により生成したものと考えられる。付加体2の構造はスペクトルならびに単結晶X線結晶構造解析により決定し、フラーレン骨格上に8員環の開口部をもつ構造であることが明らかとなった。 付加体2の電子状態について密度汎関数法による理論計算を行ったところ、8員環開口部の反応性が高いことが示唆された。そこで酸素存在下、2の溶液に可視光を照射したところ、開口部の二重結合が選択的に酸素によって開裂した生成物が2種類61%,30%収率で得られた(化合物3、4)。これらの構造はスペクトルならびに密度汎関数法による理論計算より予測したNMRの化学シフトの比較から決定し、8員環開口部の一部がジケトンになることによって、12員環の開口部をもつ誘導体であることが明らかとなった。 上記で得られた化合物3の反応性を理論計算で予測し、3に対して硫黄原子の挿入反応を試みたところ、反応は速やかに進行し、生成物5が77%収率で単離された。生成物5の構造はスペクトルならびに理論計算によるNMR化学シフトの比較により類推し、最終的には、単結晶X線結晶構造解析により決定した。すなわち、5は硫黄原子が挿入された13員環の開口部をもつ誘導体であることが明らかとなった。 また、本研究で得られた開口部をもつフラーレン誘導体2、3、4、5の電子的性質を検討するために、溶液中での還元電位を測定した。すると、2や5は開口部形成によるπ共役系の大きな変化にもかかわらず、元のC_<60>とほぼ同じ還元電位を有することがわかった。さらに3,4はカルボニル基の影響によって、元のC_<60>より約0.2Vも還元されやすいことが明らかとなった。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Kunitake, M., Uemura, S., Ito, O., Fujiwara, K., Murata, Y., Komatsu, K.: "Structual Analysis of C_<60> Trimers by Direct Observation with STM"Angew. Chem. Int. Ed.. 41. 969-972 (2002)
-
[Publications] Fujitsuka, M., Fujiwara, K., Murata, Y., Ito, O., Komatsu, K.: "Photophysical and Photochemical Properties of Decakis-Adduct of C_<120>, and Related Compounds"Chem. Lett.. 512-513 (2002)
-
[Publications] Murata, Y., Ito, M., Komatsu, K.: "Synthesis and Properties of Novel Fullerene Derivatives Having Dendrimer Units and the Fullerenyl Anions Generated Therefrom"J. Mater. Chem.. 12. 2009-2020 (2000)
-
[Publications] Kunieda, R., Fujitsuka, M., Ito, O., Ito, M., Murata, Y., Komatsu, K.: "Photochemical and Photophysical Properties of C_<60> Dendrimers Studied by Laser Flash Photolysis"J. Phys. Chem. B. 106. 7139-7199 (2000)
-
[Publications] Cheng, F., Murata, Y., Komatsu, K.: "Synthesis, X-Ray Structure, and Properties of the Singly Bonded C_<60>, Dimer Having Diethoxyphosphorylmethyl Groups Utilizing the Chemistry of C_<60>^<2->"Org. Lett.. 4. 2541-2544 (2002)
-
[Publications] Murata, Y., Murata, M., Komatsu, K.: "Synthesis, Structure, and Properties of Novel Open-Cage Fullerenes Having Heteroatom(s) on the Rim of the Orifice"Chem. Eur. J.. 9(印刷中). (2003)