2002 Fiscal Year Annual Research Report
リン配位三核ルテニウムクラスター配位子を含む金属錯体と多電子酸化還元機能
Project/Area Number |
14740359
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
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Keywords | 電子プール / ルテニウムクラスター / トリピリジルホスフィン |
Research Abstract |
自然界にはN_2からNH_3へ還元するような多電子を必要とする過程において働く酵素が多数存在する。しかし、一つもしくは二つ以上の電子を提供することのできる錯体を設計することは困難であり、実験室でこれらの反応を再生することは難しい。以前、東北大学の伊藤らにより、分子量の大きい4,4'-ビピラジン架橋六量や十量体について研究がなされ、これらの多量体が狭い電立領域でユニット数に応じた多数の電子の出し入れが可能な"電子プール"として利用可能なことが見いだされている。この研究では、μ_3-オキソルテニウム三核クラスターをトリス(3-ピリジル)ホスフィン(py_3P)で架橋して{[Ru_3(μ_3-O)(μ-CH_3CO_2)_6(L)_2]Py}_3P(P)を合成した。リン原子の孤立電子対は他の金属に結合可能である。 配位子Pは3eq.のRu三核錯体及びleq.の3-py_3Pの混合によって合成された。リンNMRでは、[{[Ru_3(μ_3-O)(μ-CH_3CO_2)_6(L)_2]py}_3P]^<3+>(L=py(1a);dmap(1b))と[{[Ru_3(μ_3-O)(μ-CH_3CO_2)_6(L)_2]py}_3P=O]^3+(L=py(2a);dmap(2b))にそれぞれ対応する-23と11ppmの二つのピークが観察された。ESIMSで、1a([M]^<3+>=920)及び2a([M]^<3+>=927)が観察された。 1と2のサイクリクボルタモグラムはルテニウム三核クラスターと似いている。三つのリバーンブル過程は2の場合で観察され、これらは(III, III, III)/(III, III, IV)(E_<1/2>=910)、(III, III, III)/(III, III, II)(E_<1/2>=-157mV)と(III, III, II)/(III, II, II)(E_<1/2>=-1550mV)である。途中の過程の電位はRu三核クラスターの電位と比較して少し移動した。以上のことから、この錯体は狭い電位領域で多数の電子の出し入れが可能である。
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