2002 Fiscal Year Annual Research Report
バイオエナジェティクス理論による魚が湖沼の富栄養化現象に与える影響の定量化
Project/Area Number |
14750423
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
|
Keywords | 小型魚類 / モツゴPseudorasbora parva / 成長効率 / オオクチバス / 瀬と淵 / エネルギー収支 / 採餌行動 / 流速 |
Research Abstract |
平成14年度は、特に定量化に必要なデータ収集のために小型の雑食魚を用いて室内実験を中心にいくつか研究を進めた。1つは、モツゴ(pseudorasbora parva)の成長に及ぼす捕食者の存在の影響について行ったもので、水槽内においてオオクチバスと共に飼育したモツゴとオオクチバスのいない状態で飼育したモツゴの成長実験と、両者の1日を通した行動を測定し、それぞれバイオマスや2週間毎の成長効率、およびエネルギー収支を求めた。その結果、実験からオオクチバスの影響を受けるということによってモツゴの成長量に違いが生じるということが分かった。餌によるモツゴ一匹あたりのエネルギーの摂取量はオオクチバスのいる、いないで5.6±0.7kJ/two week、5.1±0.6kJ/two weekとなり、オオクチバスのいない水槽の方がオオクチバスと共に飼育した水槽のモツゴよりも多く摂取していることがわかった。その結果、モツゴはオオクチバスという捕食者の存在下で成長させるとより大きくなり、その理由として捕食者の存在がモツゴの自由な行動を奪い、餌を探したり、自由に遊泳するといった行動ができなくなってしまうからであることが挙げられる。よって摂取したえさを効率よく体内に蓄えることになった。 もう一つは、より自然河川に近い環境、すなわち、瀬と淵が存在する河川環境を実験室で再現し、流速の状況によって、瀬で摂餌を行う魚の個体数やその遊泳時間、その行動パターンがどのように変化するかを調べた。1回の採餌行動にかける時間には流速による差はほとんど見られなかった。しかしながら、採餌行動中の摂餌行為において、魚は流速の変化により大きな影響を受け、摂餌の効率という観点からみると流速が速くなるにつれて下流に流されてしまう魚が格段に増えるなど、著しく低下していくことが分かった。そのため、速い流速の状況下では、魚は充分に摂餌を行うために、より多く瀬に出て行く必要が生じることになり、遅い流速のケースよりも活動の量は多くなった。その際、捕食者による被食の危険性からの避難のために、本能的に薄暗い朝・夕に多く活動し、明るくなり捕食される危険も高くなる昼に近づくにつれて行動を抑えるという傾向が顕著に表れた。これに対して、流速の遅い状況下では、流速の抵抗による制限が小さいため魚は容易に摂餌を行う。特に薄暗い早朝の時間帯に充分な量の摂餌を行えるために、その後の明るくなってくる時間帯だけでなく、薄暗くなる夕方の時間帯においても、頻繁に瀬に出て行くことはせず、淵で休息することを選択した。その結果、1日を通して瀬に出て行く頻度も、瀬での滞在時間も流速が速いケースに比べて小さな値となった。
|
-
[Publications] Manatunge, J., Nakayama, M., Priyadarshana, T.: "Environmental and Social Impacts of Reservoirs : Issues and Mitigation of Impacts"Theme 1.6 Natural Resources Systems Challenge, Encyclopedia of Life Support Systems. (2002)
-
[Publications] Asaeda, T., Manatunge, J., Priyadarshana, T., Park, B.K.: "Problems, Restoration and Conservation of Lakes and Rivers"Theme 1.6 Natural Resources Systems Challenge, Encyclopedia of Life Support Systems. (2002)
-
[Publications] Tilak Priyadarshana, Asaeda, T., Manatunge, J., Fujino, T., Gamage, N.P.D.: "Dynamics, Threats, Responses and Recovery of Riverine-Riparian Flora"Theme 1.6 Natural Resources Systems Challenge, Encyclopedia of Life Support Systems. (2002)
-
[Publications] Manatunge, J., Asaeda, T.: "Selective predation by planktivores : examining the behaviour in structurally complex habitats"67th Annual Conference of the Japanese Society of Limnology. 221 (2002)
-
[Publications] Manatunge, J., Asaeda, T.: "Prey size selectivity of planktivores foraging in structurally complex habitats"Aquatic Sciences Meeting of American Society of Limnology & Oceanography, Victoria, B. C., Canada. 75 (2002)