2003 Fiscal Year Annual Research Report
焼結低合金鋼の超強靭化に向けた拡散特性の解析とメゾヘテロ組織制御
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14750589
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 光弘 熊本大学, 工学部, 助手 (80332865)
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Keywords | metal injection molding / low alloy steels / Mo content / heterogeneous microstructure / mechanical properties |
Research Abstract |
筆者らはこれまでに金属粉末射出成形(MIM)法によるFe-6Ni-0.5Mo-0.4C(mass%)合金の熱処理材において,引張強度が約2000MPaで伸びは5%を示すなど,超強靭な特性を示すことを報告した.これは基地自体が固溶強化したことに加え,NiやMoの偏析による白色部組織を網目状に焼戻しマルテンサイト相が取り囲んだ微細な不均質(メゾヘテロ)組織に起因したものであった.従って,この白色部組織の最適な寸法,形態,分散度合などのメゾヘテロ組織の最適化を図れば,さらなる高強度化,高性能化につながるものと考えられる.ところで白色部組織一つであるMoリッチ相は種々の炭化物から構成され,Niリッチ相や基地組織より高硬度であることがこれまでに確認されている. 本研究ではさらなる高強度化を図るため,それらMoリッチ相に着目し,Moの添加量を0.5〜2mass%と増加させるとともに,より高性能な特性発現のための組織の最適化についても検討した. 研究結果を以下に示す. (1)Mo添加量の増加に伴い白色部組織は増加したが引張強度・伸びはともに低下した.これは焼結前時に位置するMo粉末の周辺に形成された粗大な気孔による焼結密度の低下ならびに炭化物形成による基地組織の炭素量の低下に起因したものと考えられる. (2)2%Mo添加材において,1473K焼結材の方が1523K焼結材より低密度であるにもかかわらず優れた引張特性を示した.これは焼結温度の低下により液相が生成しないこと,すなわち粗大な気孔を抑制できたためである.しかしながらFe-6Ni-0.5Mo-0.4C合金の特性向上にはつながらなかった. 以上のことから,メゾヘテロ組織を利用したMo添加量の増加による超強靭な焼結低合金鋼のさらなる高性能化にはMo粉末の種類や添加方法,さらにはMoの拡散特性を考慮する必要があるとともに,メゾヘテロ組織の最適化としては単に硬質相を微細に分散させるのではなく,白色部組織内での元素の濃度勾配ならびに基地組織との整合性を考慮する必要性がある等,組織制御に関する指針が得られた.
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Research Products
(1 results)