2003 Fiscal Year Annual Research Report
ポリアミン生合成代謝経路の制卸による果樹の機能改変
Project/Area Number |
14760023
|
Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
本多 親子 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 果樹研究所・生理機能部, 主任研究官 (40343975)
|
Keywords | ポリアミン / S-アデノシルメチオニン脱炭素酵素 / 環境ストレス耐性 / 酵母相補性試験 / 機能解析 |
Research Abstract |
リンゴのシュートから構築したcDNAライブラリーを用いて2種類のS-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)遺伝子のcDNAを単離した(MdSAMDC1,MdSAMDC2)。これらのcDNAの上流には小さいORF(tinyORF)が存在していたため、各cDNAに対して2種類の酵母導入用プラスミドを作製した。一つは、tinyORFからSAMDCのORFまでのすべてを含むプラスミド(SAMDC1all及びSAMDC2all)で、もう一方はSAMDCのORFのみを含むプラスミド(SAMDC1orf及びSAMDC2orf)である。計4種類のプラスミドをそれぞれ酵母のSAMDC欠損株に導入し、単離したcDNAがSAMDC活性を持つタンパクをコードしているかどうかを調べた。その結果、どのプラスミドを導入した場合にもSAMDC欠損株はスペルミジンを添加しない条件下で生育することができたため、単離した2種類のSAMDC遺伝子は共に機能的なタンパクをコードしていることが明らかとなった。さらに、tinyORFを含むプラスミド(SAMDC1all及びSAMDC2all)では、SAMDCのORFのみを含むプラスミド(SAMDC1orf及びSAMDC2orf)}に比較して酵母の生育がわずかに抑えられる傾向が認められた。他の植物を用いた実験からSAMDC遺伝子上流域のtinyORFは下流の遺伝子の翻訳を負に制御していることが明らかとなっているが、今回の実験からも、リンゴにおいてもtinyORFにより下流のSAMDC遺伝子の翻訳が負に制御され、その結果酵母の生育が抑えられていると推察された。続いて、この2種類のSAMDC遺伝子(MdSAMDC1及びMdSAMDC2)をプローブとして、リンゴの器官毎に発現解析を行った。MdSAMDC1は、細胞の分裂や肥大の盛んな若い器官で発現が高かったが、MdSAMDC2は老化した部位での発現が高い傾向が認められた。このように、2種類のSAMDC遺伝子はリンゴの生育段階に応じて異なった発現制御を受けていることが明らかとなった。さらに、塩ストレス処理したリンゴ培養シュートを用いて発現解析を行ったところ、ストレス処理によりこれら2種類のSAMDC遺伝子の発現が誘導されるという結果が得られた。また、昨年実施したスペルミジン合成酵素を導入した組換え植物(モデル植物としてタバコを利用)の候補が得られたので、この組換え体の環境ストレス耐性や形態変化について解析を進めているところである。
|