2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14760099
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大園 享司 京都大学, 農学研究科, 助手 (90335307)
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Keywords | 森林生態系 / 樹木 / エンドファイト / エピファイト / リグニン / セルロース / ミズキ |
Research Abstract |
樹木の生きた葉に定着している葉圏菌類が、落葉後の葉の分解過程にどのような役割を果たしているのかを明らかにするため、京都府北桑田郡美山町の京都大学農学部芦生演習林の冷温帯天然林において野外実験を行った。落葉分解にともなう葉圏菌類の遷移と、菌類遷移と有機物の分解過程、養分物質の動態との関連を評価するため、リターバッグを用いたミズキ落葉の分解実験を1年間にわたり実施した。この際、滅菌により葉圏菌類を排除したミズキ落葉(滅菌落葉)もリターバッグに封入し、滅菌していない落葉(非滅菌落葉)とともに実験に用いた。その結果、落葉の重量は1年間で初期の8割が減少したが、分解速度は滅菌落葉と非滅菌落葉とで有意な差が認められなかった。分解1ヶ月目には、滅菌落葉での菌類バイオマスが非滅菌落葉よりも少なく、滅菌落葉で菌類の定着が遅れていることが示唆された。しかし分解速度に差がなかったことから、分解開始から1ヶ月目までのあいだに見られる落葉の重量減少は、主に水溶性成分の溶脱によりおこっていることが示唆された。いずれの落葉でも葉圏菌類が高頻度で分離されたが、数種の葉圏菌類は滅菌落葉からの分離頻度が減少していた。土壌から定着してくる担子菌類のバイオマスの割合は、全体の6パーセント程度であった。これらの結果から、葉圏菌類がミズキ落葉の分解に大きく関与していることが考えられた。現在、これら落葉試料の化学分析を進めているところである。今年度中に落葉から分離した葉圏菌類や落葉生息菌類100株ほどが純粋分離株として保管してあるので、来年度はこれらを用いて実験室内での落葉への接種培養試験を実施し、それぞれの菌類が落葉分解にどのような役割を果たしているのかを調べる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Osono T.: "Phyllosphere fungi on leaf litter of Fagus crenata : occurrence colonization, and succession"Canadian Journal of Botany. 80. 421-427 (2002)
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[Publications] Osono T., Hobara S., Fujiwara S., Koba K., Kameda K.: "Abundance diversity and species composition of fungal communities in a temperate forest affected by excreta of the Great Cormorant"Soil Biology & Biochemistry. 34. 1537-1547 (2002)
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[Publications] Osono T.: "Effects of prior decomposition of beach leaf litter by phyllosphere fungi on Substrate Utilization by fungal decompasers"Mycoscience. 44(印刷中). (2003)