2002 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンジカの摂食圧にさらされた森林へのナギとナンキンハゼの侵入および分布拡大
Project/Area Number |
14760106
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
名波 哲 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70326247)
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Keywords | 個体群構造 / 種子散布 / 照葉樹林 / 生物学的侵入 / 耐陰性 / ナギ / ナンキンハゼ / ニホンジカ |
Research Abstract |
奈良公園東部に位置する春日山照葉樹林において、移入種の木本種、ナギとナンキンハゼの分布を記録した。個体群のサイズ構造、空間構造を解析し、両種の分布拡大プロセスを考察した。林内約45haを踏査し、胸高直径10cm以上の全個体について、位置と胸高直径を記録した。胸高直径10cm未満の個体についても、全個体の位置とサイズの記録に努めたが、個体が極めて高密度のパッチを形成している場合は、パッチの中心の位置を記録し、パッチ内の個体数をカウントした。調査域内で、ナギが6000本超、ナンキンハゼが4000本超確認され、照葉樹林への2種の分布拡大が進んでいることが分かった。侵入の歴史は、ナギの場合約1200年、ナンキンハゼの場合約50年であることを考慮すると、特にナンキンハゼの侵入が急速に進んでいることが示唆された。ナギが観察された地点の40%以上では、ナギは1個体しか見られず、単木的な定着が多いことが示唆された。ナンキンハゼの場合は、観察された地点の約40%で、10個体以上のナンキンハゼが分布しており、林冠ギャップなどの生育適地で、多くの個体が一斉に定着すると考えられた。ナンキンハゼの個体の90%以上は樹高130cm以下の稚樹であり、このことはナンキンハゼの侵入の歴史の短さか、あるいは稚樹段階での死亡率の高さを反映していると考えられた。最初にナギとナンキンハゼが植えられたと考えられる地点から距離が離れるにつれ、ナギの個体数は有意に減少したが、ナンキンハゼの個体数は距離と有意な相関を示さなかった。これは両種の分散力の違いによるものであり、特に、鳥により種子散布されるナンキンハゼの分散力が大きいことが示された。一方、個体のサイズは両種とも、距離にしたがって有意に減少し、両種が最初に植えられた場所から遠い場所では侵入の歴史が短いことが示唆された。
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