2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14760215
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
原 崇 新潟大学, 農学部, 助手 (20323959)
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Keywords | イノシトール6リン酸 / 好塩基球 / ヒスタミン放出 / ヒスチジン脱炭酸酵素 / プロテインキナーゼC / ホスファチジルイノシトール3キナーゼ |
Research Abstract |
イノシトール6リン酸(IP6)は抗酸化作用や抗ガン作用が認められているが、免疫系に及ぼす影響について報告された例は少ない。IP6がヒト好塩基球様KU812F細胞に及ぼす影響を検討した結果、ヒスタミン放出(脱顆粒反応)の促進とヒスタミンの合成を担うヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の活性増大が認められた。Ca^<2+>を含まないタイロード緩衝液中でKU812F細胞を濃度1mMのIP6と37℃で60分間インキュベートすると、約30%のヒスタミン放出が認められた。また、同じ条件に声いてHDC活性が約4倍に増大した。これらの細胞応答は、ホスホリパーゼC(PLC)阻害剤であるU73122、プロテインキナーゼC(PKC)阻害剤であるGF109203Xやchelerythrine、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤であるwortmanninにより抑制された。また、アクチノマイシンDおよびシクロヘキシミドを用いた検討の結果、IP6は、de novoのHDC遺伝子発現(mRNA転写)とタンパク質翻訳の双方を介してHDC活性増大を引き起こすことが示された。実際、IP6はKU812F細胞におけるHDCmRNA発現量を増大させた。これまでにホルボールミリステートアセテート(PMA)によるPKC活性化が好塩基球のHDC活性増大を促すことが報告されている。この場合、HDC遺伝子発現を伴わず、タンパク質翻訳レベルで調節されていることが示されている。そこで、IP6によるHDC遺伝子発現にはPI3K、PLCやCa^<2+>を介したシグナル伝達が重要であることが推察された。IP6は、経口摂取により様々な組織へ移行することが確認されている。血中へ移行したIP6は、好塩基球のヒスタミン産生と放出を介して何らかの生体調節機能を有する可能性がある。
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