2002 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病初期発症機序のV6421-APP変異ノックインマウスを用いた解析
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14770298
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神山 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30296553)
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Keywords | アルツハイマー病 / 疾患モデル動物 / 変異ノックインマウス |
Research Abstract |
研究初年度として、まずV642I-APP変異ノックインマウスにおける加齢時の特徴を調べるため、現時点で最も加齢を経ている約28ヶ月齢のF1世代マウス(変異導入ES細胞より作出したキメラマウスを、生殖系列分化確認のためICRマウスと交配して得た、ヘテロ接合型V642I-APP変異ノックインマウスおよび野生型同胞マウス)を対象に、脳内β-アミロイドに関する分析を行った。Aβ40およびAβ42(43)を特異的に測定可能なELISA測定系を用い、それらマウスの大脳ホモジェネートに含まれるAβを測定したところ、ヘテロ変異マウスにおいてはオス・メスともAβ40の含量は軽度減少していたのに対し、よりアルツハイマー病変に特異的とされるAβ42(43)の含量は逆に増加していた。その結果、ヘテロ変異マウス個体におけるAβ42(43)/Aβ40比は野生型個体と比較して1.5〜2.5倍程度の上昇値を示した。また、マウスの高次脳機能を解析する目的で行った、記憶および情動に関する各種行動学的試験(Y迷路試験、8方向放射状迷路試験、水探索試験など)によると、少なくとも潜時学習能においてヘテロ変異マウスは野生型マウスに対して有意に低下していることが明らかとなった。一方、それら個体の脳より作成した組織標本の解析によると、チオフラビンTおよび新規の高感度β-sheet構造検出試薬BSB((trans, trans)-1-bromo-2,5-bis-(3-hydroxycarbonyl-4-hydroxy)styrylbenzene)を用いた組織化学染色では、ヒトのアルツハイマー病罹患脳に認められる広範なアミロイド様沈着物(老人斑)の形成は認められず、HE染色およびNissl染色による検討からも大規模な神経脱落や組織構築上の変化は認めなかった。これらの結果を踏まえて、高次脳機能の変化は老人斑形成や顕著な神経脱落に先立って現れる形質ではないかとの仮説を立て、現在V642I-APP変異ノックインマウスおよびこれと各種神経細胞死保護因子ノックアウトマウスとの2重変異マウスにつき、引き続き組織学的変化と遺伝子発現プロファイルにおける差異に関する検討を進めている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hashimoto Y., et al.: "Involvement of c-Jun N-terminal kinase in amyloid precursor protein mediated neuronal cell death"Journal of Neurochemistry. 84. 864-877 (2003)
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[Publications] Tsuji K. et al.: "p53-independent apoptosis is induced by the p19ARF tumor suppressor"Biochem Biophys Res Commun. 295(3). 621-629 (2002)