2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞を用いた中枢神経伝送路の再生誘導と臨床応用
Project/Area Number |
14770714
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
井上 辰志 愛知医科大学, 医学部, 助手 (80304434)
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Keywords | neural stem cell / spinal cord injury / regeneration / CNS |
Research Abstract |
H14年度に引き続きラット脊損モデルを作製した.モデルはWistar rat(生後2週〜3ヶ月)を用いて,ネンブタール麻酔下に背部正中を切開し,椎弓をair drillで切除し,脊髄背側を露出した(T8-T10高位に相当).ついで脳動脈瘤用クリップを用いて脊髄を挟み込み,挫滅巣を作製した.今年度は更に重りを脊髄に落下させ,新たな脊髄挫滅モデルとして,組織所見を集積している.実際にはHE,Nissl染色による従来の方法に加えて,WGA-HRP,Texas-Redを用いて,脊髄上行性・及び下行性伝導路を標識した.これまでの検討で,高度に挫滅した脊髄でも相当数の軸索が保たれていることが判ったが,電気生理学的にはSEP,MEPで,反応が殆ど消失していた.しかし,こうしたモデルラットを注意深く経時的に調べると,徐々にSEP,MEPが回復してくるのが観察された.形態学的に残存している脊髄伝導路が極めて重要な役割を示すことが,電気生理学的所見により示された. 前年度に引き続き,この脊損モデルにラット由来の神経幹細胞を移植し,脊髄前道路の再生に与える効果を判定している.移植は定位脳手術装置に固定して注射針を用いて,脊髄背側から行った.神経幹細胞は注入部を中心に頭尾側方向数髄節に渡って移動するが,その距離は比較的限定されたものであった.また移植された細胞はニューロン,astroglia,oligodendrogliaへと分化する.損傷された軸索を直接に架橋する所見に注意を払い,検索を繰り返し続けているが,明かなものは未だ見出せていない. いずれにしてもラットの対麻痺が,限定的であるにせよ回復してくる.この回復に対応する組織所見が何であるのかの比較検討を進めている.
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