Research Abstract |
審美修復治療のニーズの拡大から,歯質に接着性のあるレジン系セメント(以後,セメント)を間接修復物の合着に応用する機会が増加している。しかし,本セメントを合着材として使用する審美性修復物の窩洞適合性は低く,セメントラインの露出に伴うギャップ形成がしばしば観察されている。これは,これらセメントの表層に大気中の酸素によって重合が阻害された部分が口腔内に露出することによるものであり,その改善が望まれている。そこで,この重合阻害層を除去することを目的として,酸素遮断効果のある酸素不透過性フィルム(以後,フィルム)の使用が,セメントの重合特性におよぼす影響についてヌープ硬さの観点から検討を加えた。 供試セメントとしては,コンポジット系のPANAVIA Fluoro Cement(クラレ),Bistite II(トクヤマ),RelyX ARC(3M),Chemi Ace II(サンメディカル),MMA系のSuper-Bond C&B(サンメディカル)およびMulti Bond(トクヤマ)を,供試フィルムとしては,Techbarrier(Mitsubishi chemical Pax co.),Harden(Toyobo),低密度ポリエチレンフィルム(Toyobo)を使用した。 ヌープ硬さの測定は,製造者指示で練和したセメント泥をビニル型に填塞し,直ちにフィルムを用いて,23±1℃,相対湿度50±5%および37±1℃,相対湿度90%の条件で1時間保管,硬化させ,フィルムを用いないで硬化させた試片と比較し,以下の結論を得た。 1.コンポジット系セメント表面におけるヌープ硬さは,酸素遮断性の高いフィルムの使用によって向上し,この傾向は温度の上昇した環境においても同様であった。 2.コンポジット系セメントの縦断面におけるヌープ硬さ曲線は,表層で低く,深部では平坦となる形態を示し,酸素遮断性の高いフィルムの使用によって向上し,この傾向は温度の上昇した環境においても同様であった。 3.MMA系セメントのヌープ硬さは,フィルムの影響がほとんど認められなかった。
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