2002 Fiscal Year Annual Research Report
スペイン・バスク自治州におけるバスク語人口の動態に関する社会地理学的研究
Project/Area Number |
14780052
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
石井 久生 共立女子大学, 国際文化学部, 助教授 (70272127)
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Keywords | バスク地方 / 言語空間構造 / 逆行的言語シフト / 制度的支援 |
Research Abstract |
本年度は,スペイン・バスク自治州を中心に現地調査を実施した。具体的には,バスク自治州の州都ビトリアを拠点として,バスク自治州政府,バスク統計局,バスク行政研究所などを訪問し,文献,統計,地図などの基礎資料の収集にあたった。さらに,ビトリア市と州北部のサン・セバスティアン市を基点に巡検を実施し,地域の実態把握に努めた。 バスク自治州は,バスク地方の中でも特にバスク語人口の集中が顕著である。同自治州において,バスク語人口は州北東部を中心とするバスク語圏に集中する,しかし近年においては,非バスク語圏に相当する州西部から南部にかけての地域におけるバスク語人口の増加が著しい。これは非バスク語圏におけるスペイン語からバスク語への逆行的言語シフトの進行を意味する。本来であれば,異質な人口の流入や優位言語であるスペイン語の影響力増大により,バスク語を使用する言語集団の活力は衰退するはずである。しかしながら,今回の調査において,行政当局によるバスク語復権のための制度的支援が,非バスク語圏におけるバスク語人口の増加に有効に機能するという現象が確認された。具体的には,バスク語人口増加に最も有効に機能したのは,州政府による公教育へのバイリンガル教育モデルの導入と実践であった。以上から,近年のバスク自治州における言語空間構造は,人口移動などの人口学的要因の影響を受けながらも,制度的支援要因によるバスク語人口の増加に代表される現象により再構築が進行しつつあるという点が明らかになった。 今後,スペイン・ナバラ自治州およびフランス・バスク地方におけるバスク語人口分布の空間構造とその動態の解明が重要な研究課題となった。来年度以降,スペイン・バスク自治州と比較しつつ,これらの地域における言語空間構造とその動態の分析を進める。
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Research Products
(1 results)