2014 Fiscal Year Annual Research Report
岩石の生物風化への耐久性評価-日本と韓国の石造文化財を事例に
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14F04301
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小口 千明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20312803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SONG Wonsuh 埼玉大学, 理工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 風化 / 微生物 / 石造文化財 / 世界遺産 / 保存修復 / 室内実験 / 野外観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年10月から2年間の研究の初年度であり、開始後1年に満たないが、課題に掲げている耐久性評価の実験を行うための準備を整えた。以下にその概要を記す。 1. 本研究に関する既存研究をレビューし、その成果を国際誌 (Earth Surface Processes and Landforms) に投稿した。 2. 韓国へ2度、出張した。1回目の出張では、忠清南道大田市所在の国立文化財研究所および京畿道廣州市所在の南漢山城世界遺産センターを訪問し、両機関の研究者らに本研究の目的を説明した。その後、世界遺産である仏国寺(慶尚北道慶州市)と南漢山城(京畿道廣州市)を現地調査し、岩石試料や各種報告書などの文献資料を収集した。2回目の出張では、南漢山城を中心に城壁の熱画像撮影を行うとともに、東西南北の門周辺と宮廷の庭に設置した温湿度自動測定センターの観測データを回収した。西門の測定器は紛失され、再設置が必要であるが、今後の風化対策の講究や城壁管理の基礎データとして役立てられる見込みである。 3. 当初の計画にはアンコール遺跡(カンボジア)は入っていなかったが、研究テーマの今後の発展を考慮し、調査対象地に加えるとともに同遺跡の石材(アンコール砂岩)を風化実験に用いることとした。このため、2015年2月、日本国政府アンコール遺跡救済チームの早稲田大学創造理工学部の内田悦生教授のグループ調査に同行した。この調査では、バイヨン寺院の修復現場を視察し、アンコール遺跡内での地衣類による風化の影響を把握した。また、室内実験で用いるための岩石試料や文献情報を収集した。 4. 計画している風化実験では、微生物を混入させた溶媒を用いるため、きちんと管理された実験設備が必要である。このため、茨城大学農学部資源生物科学科の土壌微生物研究室の太田寛行教授を訪問し、実験計画について説明し、助言をいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本と韓国における石造文化財の微生物による劣化と岩石物性との関係を明らかにすることを目的として現地調査・観測を行っている。当初の計画以上に進展している面(レビュー論文投稿と新たな現地調査を追加)もあり、やや遅れている面(室内実験)もあるが、近日中に室内実験を行う予定であるため、全体的には「おおむね順調に推進している」と判断した。 韓国の調査時には韓国の国立文化財研究所と南漢山城世界遺産センターの協力を得て順調に現地調査や温湿度観測のための測定器を設置することが出来た。日本国内の調査地域である沖縄県の首里城には5月中旬に訪問する予定である。大分県臼杵市の磨崖仏に関しては、東京文化財研究所の森井順之氏のご協力で、現地の岩石試料を入手することができた。6月中に大分県の臼杵市に直接訪問し現地調査を行う予定である。 新たな現地調査地域であるカンボジアのアンコール遺跡の調査時には、日本国政府アンコール遺跡救済チームと早稲田大学創造理工学部の内田悦生教授の協力を得て、諸々の調査を円滑に行うことが出来た。 室内実験に関しては、研究分担者のDr. Songが修士・博士研究の際にお世話になった静岡大学農学部の小川直人教授の助言をうけ、茨城大学農学部の太田寛行教授も交えて共同研究として行うこととした。3月に茨城大学を訪問して、新たな実験培地や菌株などについて打ち合わせを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国の調査地域(南漢山城)には、温湿度自動測定センサーを設置しているため、計測された観測データの回収を目的として定期的に訪問する。その際、熱画像カメラを用いて城壁の季節別の温度分布も確認をする。南漢山城の西門周辺に設置した温湿度自動測定センサーは紛失されてしまったため、新たなセンサーを現地に送付する予定である。 日本国内の調査地域には5~6月中に訪問をする予定である。特に、臼杵(大分県)の磨崖仏に関しては、現地の石造文化財の保存修復の現場で使われる樹脂に詳しい専門家(山路康弘博士、現別府市立鶴見台中学校教員)と打ち合わせを行う予定である。さらに、採石場を訪問し、追加の岩石試料を確保する。沖縄の首里城に関しては、熱画像カメラでの撮影や地衣類の被服度を調査する予定である。 微生物風化による岩石の耐久性を評価する実験に関しては、6月中に予備実験を開始し、下半期に2回に分けて本実験を開始することを目標としている。実験を行う場所は、茨城大学農学部の太田寛行教授の実験室をお借りする予定である。
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Research Products
(6 results)