2015 Fiscal Year Annual Research Report
岩石の生物風化への耐久性評価-日本と韓国の石造文化財を事例に
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14F04301
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小口 千明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20312803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SONG WONSUH 埼玉大学, 理工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 風化 / 石造文化財 / 保存修復 / アンコールワット寺院 / 臼杵石仏 / 首里城 / 仏国寺 / 南漢山城 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,日本,韓国,カンボジアにおける石造文化財について, 微生物による劣化と岩石物性との関係を明らかにすることを目的とし現地観測と室内実験を行った. (1)現地観測:現地に超小型の温湿度データロガーを設置しデータの回収を行うとともに,風化度の観察,熱カメラによる撮影も行った.そのため大分県臼杵石仏に3回,沖縄県首里城に3回,カンボジアに1回,韓国に3回訪問した.出張先の数が多いうえ,超小型のロガーでは170日以内のデータ回収が必要であるため,頻回の出張回数となった.現在はカンボジアで行った調査結果を執筆しており, 投稿直前の段階である. (2)室内実験:茨城大学農学部太田寛行教授にも助言を仰ぎ, 微生物による室内風化実験を行った. これは、普遍的に存在しているバクテリアを溶液培地に加えた溶液を用いて, 上記の文化財で実際に使用されている石材を溶解させる実験である. 適切な実験用の培地調査,実験装置のデザインを経て,2回の予備実験を行った後に1か月の本実験を行った.実験終了後に電子顕微鏡を用いて岩石の表面観察を行った.石材に含まれる鉱物の種類にもよるが, バクテリアを用いたケースで石材がよりダメージを受けることが確認された. 現在, 画像分析の途中であるが, 投稿論文としてまとめる作業も並行して行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の実施計画として最重要の位置づけにある微生物を用いた溶解実験を順調に終了することができた。また現地計測においても、環境データのみならず、エコーチップ硬度や温度画像情報も取り入れ、新知見につながる予備的な成果を得ることができた。以上の点を考慮し、「おおむね順調に進展している」と判断した。2016年度はこれらのデータを継続して収集するとともに、詳細に解析・検討し、研究内容を深めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は, 現地観測を継続的に進めるとともに,実験結果について深く解析し,論文化作業を進める. (1)現地観測:沖縄の首里城については, 調査許可を得るのに予想以上に時間がかかり,2015年10月から観測を開始したた. また南漢山城(韓国)では, 城壁のロガー設置場所に空隙が多くて,ロガー紛失が相次いだ. これらの理由から,2016年度も継続的な観測を行う. (2)室内風化実験: 微生物風化実験後に撮影した石材表面の変質程度の画像データを,定量的に分析し, 比較検討する.さらに,(1)の現地観測結果から得られた温湿度のデータを参考に,岩石物性の違いが微生物の風化にどの程度影響を与えるか, について評価する. (3)論文化作業: カンボジアのアンコールワット寺院に関する投稿論文は, ほぼ完成段階にあり,室内風化実験の結果も反映させて近日中に学術雑誌に投稿する予定である.また, 生物風化に関する論文を地学雑誌に投稿する計画もある.
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Research Products
(3 results)