2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世-近代移行期の地域金融構造と領主・豪農・村の社会・経済的機能についての研究
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14J00121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東野 将伸 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 日本史 / 日本近世史 / 金融 / 頼母子 / 豪農 / 一橋領 / 年貢 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、頼母子、公金貸付、豪農金融など地域における多様な金融活動の分析を通じて、近世後期~近代初頭における資金流通構造・地域金融構造の全体像を解明することを目的としている。本研究の1年目の課題は、(1)頼母子関係史料の収集、分析、論文執筆、(2)一橋家徳川家文書の収集、数量データの整理の2点であった。 (1)については、岡山県立記録資料館(岡山県岡山市北区)、井原市文化財センター(岡山県井原市)、大阪大学日本史研究室(大阪府豊中市)等の史料所蔵施設で調査を行い、備中国後月郡と摂津国島下郡の頼母子帳や規則書、質地関係史料を収集した。これらの史料をもとに対象地域の頼母子の運営構造を明らかにするとともに、地域の豪農が「引請人」という役職に就任することで、頼母子の資金調達手段としての信用を維持する機能を果たしていたことを解明した。この成果は、雑誌論文というかたちで次年度に公表される予定である。 上記の史料調査の際、並行して備中国後月郡本山成家・摂津国島下郡高島家の豪農金融や、備中国の年貢関係史料についても収集し、こちらについても分析、成稿を行っている。このうち、高島家の宝暦~文政期の豪農金融については、大阪歴史科学協議会大会での学会発表というかたちで公にすることができた。 (2)茨城県立歴史館(茨城県水戸市)で一橋徳川家文書の調査を行い、「米金納払御勘定目録」(以下、「目録」)や一橋邸勘定所の会計帳簿等の史料を収集した。(1)の分析と並行して「目録」等の会計帳簿を翻刻し、各国に散在する一橋領が、一橋家財政全体の中で占めた位置づけを明らかにした。それとともに、文化~慶応期の一橋家は、幕府に資金を預け、幕府の持つ利殖機能を利用するかたちで、自身の資金運用を図っていたことなどの点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目の課題のうち、(1)頼母子関係史料の収集、分析、論文執筆、(2)一橋家徳川家文書の収集、数量データの整理、の2点については、いずれも順調に作業が進んでいる。その中でも、(1)については次年度での論文発表が決定している。また、豪農金融や年貢、質地関係史料といった関連する史料も多く収集でき、次年度の研究の準備も十分に行うことができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究内容から引き続き、一橋家の会計帳簿の分析を行っていく。その際、会計帳簿に加えて書簡類についても必要史料を収集していくことで、政策決定過程や政策担当者の認識も含めた複眼的な視点から、一橋家の金融・救恤政策の実態を明らかにしていく。そして、この分析内容をもとにした学会報告、論文執筆を行っていく。 さらに、地域金融組織に関する史料の収集、分析、論文執筆も次年度の課題としている。これについては、岡山県立記録資料館などの史料所蔵施設において、岡山地域の産物会所や銀行類似会社についての史料を収集し、その運営構造を分析していくことで、近世―近代移行期の地域金融組織が果たした機能について分析していく。その際、本年度の史料調査の際に収集した関連史料類も適宜参照していく。さらに、本年度の研究成果のうちの未発表のものについて、順次発表していくことも課題としたい。
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