2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J00763
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 一誓 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 三元系酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
β-NaFeO2型酸化物のバンド計算については、それを計算するのに適した汎関数を探索した。価電子帯のXPSスペクトルや実測の結晶構造に基づいて、計算結果を評価した。その結果、β-CuGaO2の計算の場合、LDA+Uを汎関数として用い、U= 5~7 eVとするのが最適であることが明らかになった。その条件下での計算では、β-CuGaO2のバンド間遷移が直接許容であること、CdTeやCuInSe2などと同程度の大きな吸収係数を有すること等がわかった。これらに加えて、β-AgGaO2や、デラフォサイトα-CuGaO2やα-AgGaO2についても計算条件の最適化と計算が完了しており、CuとAgの違いや、βとαの結晶構造の違いが、電子構造に与える影響についても体系的に明らかになった。 β-CuGaO2薄膜については、前駆体のβ-NaGaO2薄膜をCuCl蒸気でイオン交換することによって作製を試みた。作製した薄膜のXRDパターンはβ-CuGaO2と同定され、EDXによる組成分析でNaがCuに完全に置換していることが明らかとなり、β-CuGaO2薄膜が作製できていることがわかった。これにより、薄膜を用いた光学・電気的測定や、他のn型半導体と組み合わせた多層膜構造の素子を作製することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題における本年度の成果の1つは、β-CuGaO2及びβ-AgGaO2の電子構造の解析である。実測の電子構造や結晶構造を再現できる、最適な計算方法が明らかとなった。その上で、それぞれの基礎的な物性についての知見を得ることができた。加えて、光電子分光による価電子帯の定性的な解析もした。これらの成果は、3報の論文として27年度前期に投稿する予定である。 成果の2つ目は、β-CuGaO2薄膜の作製である。スパッタリング法によって作成したβ-NaGaO2薄膜をイオン交換することにより、β-CuGaO2膜の作製に成功した。これにより、いままでの粉末試料ではわからなかった光学特性や電気特性が明らかにすることができる。加えて、他のn型半導体とp/n接合を形成することもできるため、デバイス化への道もひらかれた。現在、ZnOとのp/n接合を作製中である。 これらの成果は当初の一年次の計画をすべて満たすものであり、加えて本来は二年次で予定していた光電子分光での電子構造解析が前倒しされて含まれるなど、期待以上の進展であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
バンド計算については、すでに計算が完了しているため、あとはアウトプット活動をして、研究を終了する。専門誌への3報の論文投稿を予定している。
β-CuGaO2の薄膜の作製については、前駆体β-NaGaO2薄膜の作成条件の最適化、およびイオン交換条件の最適化を図る。同時に、n型ZnOとp型β-CuGaO2のp/n接合の形成や、光電流の観測等のデバイスへ発展させることを念頭にいれた研究を推進する。
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Research Products
(14 results)