2014 Fiscal Year Annual Research Report
分析単位としての「会話」 -日常に生じる会話終結場面の体系的記述から-
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14J01218
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
居關 友里子 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 会話 / 活動 / 終結 / 単位 / 境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では日常生活の中で生じている会話の終結にどのようなものがあるのか、またその具体的場面(たとえば「別れ」の場面)がどのように行われているのかについて記述する。ここから、私たちが何をもって会話というまとまりを見出しているのかについて考察する。 本年度は以下2点に取り組んだ。①会話終結が明確な場面における音声的・視覚的振る舞いの記述:別れの際の相互行為的振る舞いに関する資料を、実験環境において収集した。可能な限り自然な会話終結が捉えられるよう実験の組み立てを検討し、映像資料の収集を終えた。得られた資料においては、自然会話に見られた終結場面と類似の振る舞いが見られる一方で、終結を切り出すのが参与者のいずれであるのか、また切りだされるタイミングがいつであるのかについて強い傾向が観察された。現行の活動に次ぐ活動が用意されている、というこの実験環境の文脈が影響しているものと予測され、当該場面の終結が前後の活動を参照しながらなされていることが示唆される。②共在環境におけるゆるやかな会話終結:会話終結の周辺的場面として、参与者同士が継続して同じ空間にいる会話場面を扱い、ここに生じた活動の境界部分について記述を行った。活動の開始が遡及的に認められている振る舞いや、活動の終結後にも当該活動の再開する可能性に志向した振る舞いが観察され、終結がリアルタイムに、また一点で生じるものに限らないことが示されている。本年度扱った2つの場面について、用いられている複数のモダリティをどのように重み付けし、またモダリティ相互の関係を考慮した記述をすべきかについて検討の必要がある。当該場面を捉える妥当な記述について、次年度も検討を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は扱う資料の収集、基礎的な観察を進めることができた一方で、具体的な成果をまとめる段階に至らなかった。これは、典型的な終結場面に相当するものとして収集した①の資料が、観察の結果、収集前に予想していたものとは異なる終結場面として生じていたなどの理由による。この資料は切り捨てるのではなく、適切に研究に位置づけることで本研究に有効な資料として扱えると考えている。ただし具体的な扱いは未だ検討段階にあるため (3)やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に取り組むのは大きく以下の2点である。 (1)ここまで記述を進めてきた会話終結場面およびそれに類似する場面についての記述を取りまとめ、各場面間に見られる振る舞いとそれに影響していると考えられる要因について抽出、整理する。この際必要に応じ、条件を統制し、会話資料の追加収集を行う。また26年度に収集した実験環境の資料をはじめ、分析が複雑であり保留している資料については、他の場面の特徴と照らし合わせ位置づけを検討しながら、記述をまとめる。(2)会話終結に関連する要因をもとに、また相互行為の分析に用いられる既存の概念、単位を参照しながら、「会話」というまとまりをいかにして切り出すことができるのか、その指標について考察する。
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