2014 Fiscal Year Annual Research Report
冷却原子系における人工ゲージ場が生み出すトポロジカルな非平衡量子現象
Project/Area Number |
14J01328
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 大也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / 人工ゲージ場 / 近藤効果 / 非平衡量子現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却原子系においては、光を使って原子をさまざまな方法で制御できるというのが大きな利点であり、原子が光をまとった状態を利用した人工ゲージ場はそのような現象の典型的な例である。光と強く結合した冷却原子気体における多体効果を調べ、非自明な量子現象を探索する足がかりとして、本年度は特に原子間の強い相互作用の効果と非平衡状態としての側面に注目して研究を行った。
具体的には、そのような「光をまとった」状態の冷却原子気体と、強相関系特有の現象である近藤効果との間にある類似性に着目して、光を使った新奇な近藤効果の理論提案を行った。光格子中のアルカリ土類様原子の持つ特徴的な光遷移に注目し、スレーブボソン法を用いた理論解析によって光照射下のアルカリ土類様原子における近藤効果の可能性について調べた。それにより、以下のことが明らかになった。 (1)光によって近藤効果が誘起されること:光を照射することで系は本質的に非平衡な状態となり、光励起によって温度が上がってしまうという問題がある。しかし、その温度上昇は近藤温度よりも低い値になることを見出し、光照射下で近藤効果が起こることを確認した。 (2)また、このようにして光によって誘起された近藤効果は、アルカリ土類様原子の持つスピン自由度と組み合わせることによって、通常議論される固体中の近藤効果では起こらないような新奇な性質を示すことを明らかにした。アルカリ土類様原子の持つ多成分のスピン自由度は、近藤効果によってそれぞれ有効質量の重いフェルミ液体へと変化するが、スピン成分によってそのくりこまれ方が異なるため、スピンの大きい成分が選択的に重いフェルミ液体となるという振る舞いを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光と強く結合した量子系における強相関効果・多体効果は一般に非平衡性などの難しい要素を含んでいるが、上述のように光遷移と近藤効果との間のアナロジーに着目することによって、光を使った新奇な強相関現象の提案を行うことができた。この光誘起近藤効果のメカニズムはシンプルであるがゆえにより進んだセットアップへと容易に拡張できるため、今後の解析においても良い足がかりになると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果はさまざまなセットアップに応用が可能であるため、光による制御と近藤効果を視点の中心に据え、冷却原子気体を利用したより非自明で興味深い現象を探索することを計画している。特に、近藤効果としての側面を追究することと、トポロジカルな側面に注目することを考えている。くりこみ群や場の理論といった解析的手法や動的平均場理論などの数値的手法を考慮に入れ、幅広い可能性を注意深く検討する予定である。
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