2014 Fiscal Year Annual Research Report
世代間倫理をめぐるハンス・ヨナスと討議倫理の思想の研究
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14J01350
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸谷 洋志 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ハンス・ヨーナス / 討議倫理 / 世代間倫理 / 自然哲学 / 責任倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、世代間倫理の理論を研究することである。世代間倫理とは、現在を生きる世代が、遠い未来の世代に対して引き受ける責任を主題とする、倫理学の一領野である。現代の社会において、テクノロジーは高度に複雑化・高性能化しており、その影響力は遠い未来の世代にまで及ぶ。そのため、現在の世代による行為は、まだ生まれていない遠い未来の人類に被害を与えるものになっている。こうした問題は、環境破壊・医療問題・原発問題など、今日において学問の垣根を超えて問われている重大な論点である。しかし、世代間倫理は特有の理論的な困難を抱えている。それは、責任の対象となる未来の世代がまだ生まれていない以上、現在の世代と未来の世代は非対照的な関係に置かれている、ということである。現在の世代と未来の世代は、顔を合わせて約束を交わすこともできず、また、討議によって合意を形成することもできない。では、この未来の世代に対する責任はどのように基礎づけることができるのだろうか。本研究はこうした理論的な課題を解決するために、世代間倫理のもっとも重要な哲学者であるハンス・ヨナスと、その思想を批判的に継承する討議倫理の思想とを研究し、世代間倫理の基礎づけの可能性を模索するものである。平成26年度においては、国外への研究滞在を利用した文献収集、それらを用いた精緻なテクスト解釈に基づきながら、ヨーナスの思想の体系的な解釈と、それに対する討議倫理の哲学者による先行研究を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は、ヨーナスの責任原理の体系化と、その討議倫理による受容を、テクスト解釈に基づきながら検証している。平成26年度は、ヨーナスの責任原理と自然哲学との連関を明らかにし、また、討議倫理によるヨーナスの受容を批判的に検討した。これらの成果は研究計画に従って遂行され、学術誌に投稿、掲載されている。以上の理由から、報告者は本研究がおおむね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの方向性を維持しながらも、更なる研究の深化・拡大を目指す。報告者はこれまで、ヨーナスの責任原理と自然哲学の関連を明らかにしてきたが、これに加えて、歴史哲学・神学の思想との連関も視野に含め、より体系的・包括的な責任原理の解釈を試みる。また、これまではヨーナスとの比較という文脈に限って検討してきた討議倫理の思想を、より主題的に考察していく。前年度と同様に、研究の成果はその都度ごとに学会発表や論文投稿を通じて社会に公開していく。
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Research Products
(5 results)